2013年1月6日日曜日

『激動予測』

『100年予測』を書いた「影のCIA」と呼ばれるストラトフォーのジョージ・フリードマンの著作。
前作が100年間を予想したのに対し、今回はこの10年間でアメリカがどうすべきか、という戦略を述べている。

「マキャヴェリ流大統領」というものを提唱し、過去の大統領の事例として、リンカーン、ルーズヴェルト、レーガンの3人を引いている。

◎わたしは神とともにありたい。しかし、ケンタッキーを失うわけにはいかない。
by 共和国を守った エイブラハム・リンカーン

◎規則は絶対不可侵ではないが、理念こそ、神聖にして侵すべからざるものである。
by アメリカに海を与えた フランクリン・ルーズヴェルト

◎異国で無邪気を装うことはできない。そこは無邪気な世界ではないのだから。
by ソ連を弱体化させアメリカが帝国となるための地ならしをした ロナルド・レーガン


3人の大統領はそれぞれの目的を達成するために、進んで嘘をつき、法を犯し、原則を破った。「マキャヴェリ流の大統領」とでもいうべきパラドクスを体現していた。
これからの10年(というより以前からもずっと)、力の何たるかを知り、道徳的な核をもつ指導者、アメリカの約束を果たすためならば、二枚舌を厭わずに高潔さを保てる指導者が必要だと著者は述べている。


まずは善かれ悪しかれ、アメリカは既に帝国であることを認識すべきというところから始まる。
その上で、中東(イラン、イスラエル)、ロシア、ヨーロッパ、東アジア(著者の表現だと「西太平洋地域」)などに対する地政学的な戦略について述べられている。
エリアの歴史が語られるのに続き、これからの将来予測が入っているのが非常に楽しい。
歴史の授業も、過去から現在だけでなく、ついでに未来(将来)についても想定を語るようになるととても楽しく学べるのではないか。(自分が歴史の先生だったら夏休みの宿題に出そうと思う)

正直、ちょっと海洋ルート(制海権)を重視し過ぎな判断のような気がするが(まぁそれが地政学というものなのでしょうが)、その点を除いても、ほぼインターネットで調べられる情報をベースに戦略を構築しているのが見事。
以前CIAでは95%はインターネットで得られる程度の情報を元に判断し行動しているというのがすごく実感として分かる。
要はどの情報が重要であり、その情報をどのように組み合わせて現状を把握するかで、「見える世界」が変わってくるということだ。

まだまだ自分も「目の見えているはずの世界」が見えていないであろうことが認識できたのが非常に楽しい経験であった。 

それにしても、この本の中にたくさん「○○というアメリカの戦略は、アメリカ大統領はおくびにも出してはならない」という表現が出てくるのだが、この本の信憑性が高くなればなるほど、せっかく大統領が黙ってるアメリカの真意を堂々と書いちゃっていいのかしら、と思うのは自分だけであろうか。


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