2009年3月6日金曜日

『百ます計算の真実』

陰山英男先生の百ます計算振り返りと教育論と言った感じの本です。
陰山先生は反体制に見えて、「実は日本の学習指導要領は優れていて、これが日本の教育を支えている」と主張してみたりでニュートラルな感じで好感がもてます。

国や自治体が教育にどれだけお金をかけているかを示すGDPに占める教育への公財政支出割合。
世界全体平均で5.0%だそうです。アイスランド7.2%。フィンランド5.9%。日本は3.4%。
日本はもっと教育にお金をかけてもいいのかもしれません。

陰山先生によると、
「学力というのは三層構造でつくられていて、底辺には健全な生活習慣があり、その上に基礎基本の学習と読み書き計算のトレーニングがあり、さらにその上に多様な学習がある。下ができていないのに上に行くのはあり得ない。百ます計算は基礎基本の学習。基礎基本ができないのに応用ができないのと同様、健全な生活習慣ができていないのは百ます計算以前の問題である。」
とのこと。
「百ます計算は子供を切れさせる」という批判に対して「まずは健全な生活習慣を」と反論しています。

ちょっと面白かったのは、九九に見る日本の教育文化の話。
実は九九は春秋時代の中国で生まれたのですが、九の段から教えていたそうです(だから九九という)。
中国では九九は一部の特権階級だけが習う特殊な技術でした。だから覚え方を難しくすることで庶民が習えないようにし、自分たちの特権を守っていたとのこと。
日本では明治時代に全国民の教育をすすめる必要があったため、簡単にとっつき易いように一の段から教えたそうです。

陰山先生の教育的人生訓「人間性の教育」も書かれています。
3つの約束として
1.怠けない
2.人(自分も)の心と体を傷つけない
3.嘘をつかない
を守らせれば子供は間違った方向にいかないとのことです。

百ます計算についての振り返りとしては、百ます計算が子供に与えたのは『自信』、とのこと。
だから全く同じ問題を何度もやらせることにも意義があるのだそうです。

○父親が怖い存在となることで、子供は「我慢する」ことを学ぶ。
○子供をディスプレイから遠ざけよう。
○携帯電話は対人関係能力を落とし、結果的に世界を狭くしてしまう。
○大人の学力も低下している。
などなど、理屈じゃないけどこう思うという感覚が自分と似ています。
大阪府の教育委員会でも頑張って欲しいものです。

0 件のコメント: