野中郁次郎先生ほか、防衛大学の先生方が書かれた本です。
「坂の上の雲」以来、ちょっと戦史づいた感もあり、手に取ってみました。
「戦略論」が歴史的にどのように展開されてきたか、というまとめを以下の6つの実戦例を通して記述したものです。
クラウゼヴィッツの『戦争論』を皮切りにどのような「戦略理論」があって発展、展開してきているのかの概略をつかむことができます。
1.毛沢東の反「包囲討伐」戦
2.バトル・オブ・ブリテン
3.スターリングラード攻防戦
4.朝鮮戦争
5.第4次中東戦争
6.ベトナム戦争
<戦略のメカニズム>
①戦略の構造は全体として重層的である。手段ー目的という連鎖の中で、手段は目的によってコントロールされ、逆に目的は手段によって制約される。
②主体間の相互作用の逆説的因果連鎖は、各レベルで(水平的に)展開するのみならず、各レベルの間で垂直的にも展開する。端的にいえば、ある戦略レベルでの過度の成功は、結果的に、他のレベルあるいは全体としての失敗を導くことがある。(成功のし過ぎは失敗を招くというパラドクス)
という抽象的、概念的な話も6つの具体事例を伴うので分かり易くなっています。
リーダーシップとしては『賢慮型リーダーシップ』というものが述べられていて
「賢慮型リーダーは、ダイナミック・コンテクストの直視から、どの側面が検討に値するのか、どの側面は無視してよいのかを察知する、状況認識能力(situation recognition)をもつ。これは問題は何かを把握する問題設定能力であり、いわゆる達人の能力と通底する。問題解決の大半は、実は問題設定によるものなのである。
賢慮型リーダーは、個人の全人格に身体化している高質の暗黙知を認識(cognitive:ものの見方)と実践(technical:ものの作り方)の「徒弟制度」を通じて、組織の全レベルのリーダーに伝承し、自立分散型リーダーシップ(distributed leadership)を発揮させ、組織のソフトパワーを最高度に発揮させる。」
とあります。
戦史から導き出されたリーダーシップに関しても認知的徒弟制度(cognitive apprenticeship)が出てくるあたり、突き詰めて行くとどのルートを辿っても同じ場所にたどり着くような気がしてちょっとビックリしました。
0 件のコメント:
コメントを投稿