”イメージストリーミング”という脳を活性化する手法について書かれた本。
ちょっと一般には理解されにくい(信じてもらいにくい)内容なので、その信憑性を増すためにか、脳科学系、認知心理学系の話がたくさん出てくるので、むしろそちらの方が面白い。
・のだめカンタービレで有名になったモーツァルトの『二台のピアノのためのソナタ ニ長調』を10分聴くだけで、知能指数は8から9ポイントあがる(但し15分程度で元に戻る)
・人間の脳は一秒につき約126ビットの情報に対してしか集中できない。他人の話を聞いたりするだけでも40ビットしか処理できなくなる。
・私たちは一日のうち50%の時間を空想につかい、8%の時間は眠りの中で夢をみている。つまり、私たちは人生のうち58%を無意識の中ですごしている。
・潜水は脳を刺激するのに効果的。血液中の二酸化炭素が増加すると、私たちの体はそれを酸素の在庫が減ってきていると解釈する。そして、頸動脈が大きく開いてより多くの血液を脳に運ぶ。それによって、酸素を含んだ血液が通常以上に脳に行き渡る。
などの小ネタ系の話や
<ロシア人のヴィゴツキーが行った、幼い子供達に蝶の羽を描かせた実験>
芽生えた単語力に加えて、”点””三角形””スラッシュ”など基本の形を表す言葉を覚えていた子供達は、記憶だけでも蝶の羽を上手に描くことができた。
一方、そうした言葉をしらなかった子供達は写真を模写させても、まともな羽の絵を描くことができなかった。
その後、描くことができなかった子供のうち半分にその大切な言葉を教え、残りの半分は教えないままにして再び実験したところ、
言葉を教えられた子供達は、最初から言葉を知っていて羽を描くことができた子供達と同じくらい上手に絵を描けるようになった。
という”言葉”がいかに大切かという認知心理学的話もふんだんに盛り込まれている。
”meme"とは進化生物学者のリチャード・ドーキンスが発案した造語で、文化を人の脳から脳へと伝達される自己複製子(情報)であると見なしたときに、伝達される情報の最小単位のことである。
複製、伝達、変異という三つの条件を満たしていれば遺伝子以外の何かであっても同様に「進化」するはずであるとされている。
この本では”genious meme” (天才のミーム)は存在し、天才が天才を生むのは歴史を見ても明らかという考えられている。
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歴史家達によると、天才は一人だけでは現れず、天才は一気に出現することが多々ある。
紀元前5世紀、ギリシャのアテネで、プラトンやソクラテスの哲学、フェイディアスの彫刻、ペリクルスの政治(治国策)、ソフォクレスやエウリピデスの詩、アリストテレスの科学が生まれた。
そして2000年後にも、フローレンスという都市国家で、ミケランジェロやダ・ヴィンチ、ボッティチェリ、ミランドラ、フラ・フィリッポ・リッピらのような巨匠が誕生し、ルネッサンスが起きていた。
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そしてこの”genious meme"を伝播させる手法として”イメージストリーミング”という手法を提案しているのである。
日本の歴史を見ても、戦国時代や明治維新の頃には”人物”がキラ星のごとく出現している。
統計学的には、どの時代であっても優秀な人間は同じ割合で出現するはずなので、この現象は優秀な人物を輩出しやすい”場”がある時代かどうかという違いということで考えていたが、伝搬される”meme"により”大人物”(本文中では”天才”)が多く生まれるという説は面白いと感じた。
”イメージストリーミング”自体はちょっと読んだだけではピンとこない部分もあるが、『全脳思考』で神田昌典氏も同様に”Creative Problem Solving Method”という手法を提言している。
いずれもイメージから入ってそれを言語化するという手法だ。
マインドマップ、ワークショップに引き続き、創造的会議の手法となっていくのかも知れない。
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