久々読んだ骨太本。ダニエル・ピンク氏の著作。
氏は本書の概要ということで、巻末に3つの方法で「まとめ」を書いている。
色々なところで著作を発信してもらうにはとてもいい試みである。
その3つの方法というのも、時間(文字数)によってわかれていて非常に面白い。
その1:ツイッター向けまとめ(最大140字まで)
その2:カクテルパーティ向けまとめ(多くても100語程度。あるいは話して1分以内)
その3:きっちり各章ごとのまとめ
報告やら説明やらを短時間で行う場合に何を話すかで、勝負が決まることが多い。
佐々淳行氏が言う”エレベーターブリーフィング”、”スリーミニッツ・リポート”、”フィフティーンミニッツ・デシジョン”は説明時間により、説明する内容を絞るというものだ。
そう考えると、それを読者がやりやすく、また著者の意図通りにやってもらうためには非常に優れた方法である。
あまのじゃくなので、それをそのまま利用せずに自己流に感想を述べたい。
人間を行動に駆り立てるものは何か。
<モチベーション1.0>
原始時代は空腹を満たしたり、生殖など生存本能に基づくもの。
<モチベーション2.0>
工業化社会になって、アメとムチで駆り立てられた。
さて、それでは次なる<モチベーション3.0>とは?
という問いから本書は始まる。
仕事と勉強を「アルゴリズム」(段階的手法またはルーチンワーク)と「ヒューリスティック」(発見的方法)の二つに分類したとすると、外的な報酬と罰、つまりアメとムチはアルゴリズム的な仕事には効果を発揮するが、ヒューリスティックな仕事にはむしろマイナスに作用するおそれがあることが様々な実験で分かっている。
創造的作業であるヒューリスティックな仕事には、アメとムチがプラスに働かないというのは容易に想像がつくが、むしろマイナスに働くというのがポイントである。
ここで著者は、<モチベーション2.0>と<モチベーション3.0>の違いを、物理法則に喩えている。
ニュートンの法則が、物理的な環境を説明したり、投げたボールの軌道のグラフ化に役立つように、<モチベーション2.0>は社会的状況を把握し、人間の行動の予測に役立つ。
だが、ニュートン物理学は、素粒子レベルになると問題にぶつかる。「ハドロン」「クウォーク」「シュレディンガーの猫」といった量子力学の不確定性の支配する世界では、奇妙な事態が生じ、ニュートン力学では説明できない事態が発生する。
あるレベルになると<モチベーション2.0>では機能しなくなるという喩えだ。
さて、その”あるレベル”とはいかなるものか。
創造的業務においては、ひとたび「生計を立てる」という基本的な報酬ラインが充たされてくると、アメとムチは、意図した目的とは正反対の効果を生み出す場合が多い。
<モチベーション3.0>における重要な要素は、自律性、マスタリー、目的、の3つである。
【自律性】
課題(Task)、時間(Time)、手法(Technique)、チーム(Team)の4つについて自律性が得られると内発的動機が発現しやすい。
弁護士という職業は、この自律性が得にくいので傍から見ると楽しそうに見えないという指摘は秀逸だ。
【マスタリー】
マスタリーとは、何か価値あることを上達させたいとういう欲求のこと。
チクセントミハイの「フロー」の状況が理想であるが、熟達にはそれを繰り返す「根性」が必要であるというのが面白い。
また、マスタリーはキャロル・ドゥエックのいうマインドセット(心の持ち方次第)である。わくわくマインドセット(growth mindset)であるか、こちこちマインドセット(fixed mindset)であるかの違いはマスタリーにおいて大きな差となって現れる。
【目的】
高い成果を上げる秘訣は、人の生理的欲求や、信賞必罰による動機付けではなくて、第三の動機付け〜自らの人生を管理したい、自分の能力を拡げて伸ばしたい、目的を持って人生を送りたい〜という人間に深く根ざした欲求にあると科学で証明されている。
ということで、目的をもってモチベーションたらしめるべし、ということなのだが、もう一つ掘り下げて書かれてもいいテーマである気がした。
概略は上記の流れであるが、具体的な方策ついての記載が本書ではなされている。
マーク・トウェインのトム・ソーヤの中にでてくる話をひいて、「ソーヤー効果」と名付けているが、マーク・トウェイン曰く
「”仕事”とは”しなくてはいけない”からすることで、”遊び”とは、”しなくてもいい”のにすることである。」
なるほど、逆に”しなくてもいい一手間”をかけることで”仕事”を”遊び”へと意識的に変えることができるということかもしれない。
明日からは”しなくてもいい一手間”を意識的に行うようにしよう。
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