2010年8月30日月曜日

『勝ち残る!「腹力」トレーニング』

無酸素で世界に14座ある8000m峰に挑み続けている登山家、小西浩文氏の「腹力」に関する本である。

疲労で凍死した遭難者というのは、ザックの中に、まだ食料や着込むことのできる防寒具を残したまま亡くなっていることが多い。つまり、すべての力を使い切る前に力尽きているのだ。
肉体の限界より、「絶望感」が死に至らしめているのだ。
「72時間限界説」というものがある。地震などで生き埋めになった人が3日以内に救助されないとほぼ絶望的という話だが、これは肉体的な限界というよりも、人間の心が折れる限界なのだ。
もう、ダメだ。
このような絶望や恐怖に打ち勝つのは、「絶対に生き抜くのだ」という精神力、それを生み出すのが「腹力」である。

というわけで、その「腹力」の鍛え方についてである。
まずは何と言っても「腹式呼吸」。腹式呼吸が腹圧を生む。
「吐ききる」ことが無意識にできるようになれば、腹式呼吸はマスターできたと言ってもいいらしい。
全て吐ききるためには「力み」をなくすこと。
息を吐ききろうとして猫背になるのはまずい。背中を丸めるということは、肩に力が入っているということ。
「習慣」という点で「腹に力を入れない」という癖をできるだけ早くつけること。


また、「ニヤニヤ笑い」を会得せよ、とも言う。
どのように見られようと構わない、どのように思われても関係ない。そのような姿勢は、人間としての「器」を大きくもするし、敵対する相手には「何を考えているのかわからない」という心理的なプレッシャーを生む。
ムエタイにおける「ニヤニヤ笑い」は「教育」の賜物なのだという。対戦相手の自信を揺るがせるため、心理的な攻撃ということで、ムエタイの選手は戦いの時にニヤニヤしろということを幼い頃から徹底的に鍛えられるらしい。

風呂の最後に冷水シャワーを浴びると自律神経のリズムが整う。
温水シャワーの温度を下げて、徐々に水へと変えていく。
熱いお湯を浴びると「副交感神経」、冷たい水を浴びると「交感神経」というものが刺激される。交互に刺激することで自律神経のリズムが整い、新陳代謝や血流がよくなり、免疫力もアップする。

「太陽を食べろ」とかちょっと宗教がかっている部分もあるのだが(それも個人的には好きだが)、ロブサンというパートナーのシェルパが、一瞬の判断で小西氏を救うために分厚い登山用のグローブを外し、指笛を吹いたエピソードなどは圧巻。
リアルに生死の境を生きている小西氏の話には説得力がある。

カラオケは「腹力」を鍛えるのにいいらしいし、力まない呼吸法をマスターして「腹力」を鍛えることとしたい。

0 件のコメント: