2008年10月30日木曜日

『ソロスは警告する』 ジョージ・ソロス


ヘッジファンドの生々しい話かと思いきや、哲学の話が半分くらい占めています。

人間は市場の動きについて理解(認知)した上で、投資などの働きかけ(操作)を行う。だが、働きかけが行われた結果、その市場は変化し、さっきまでその人間が理解していた「市場」とは別のものになっている。そのため、人間は市場を”完全”に理解することができない、という「再帰性の法則」ーーーソロスの投資活動における中心的な法則らしいのですがーーーに至るまでの哲学論が書かれています。
投資家が哲学的なことを真剣に考えているという事実は面白いのですが、正直この法則が投資活動にどのように具体的に反映しているのかはよくわかりません。
(考え方自体もいわゆる社会構成主義的な考え方に似ている気がして、そんなに新しい考え方なのかと。。単に私の理解が足りないのかもしれません)

今回の一連のバブルを”超(スーパー)バブル”と位置づけ、この超バブルにも他のバブルと同じく、「信用膨張」という支配的なトレンドと「市場原理主義」という支配的な誤謬とが存在したとしています。
今後世界的に取られるであろう対応策としては、金融当局による規制の強化が挙げられています。

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ソ連におけるような政府の介入が例えいつも間違っていようとも、だからといって市場が完璧だということにはならない。
金融市場は均衡点に向かって収斂していくわけではなく、放っておけば興奮と絶望の両極端を行ったり来たりする方が普通なのだ。
だからこそ、金融市場には規制と介入がなされる。

手綱を解かれ、タガが外れたままの金融業界が経済を大混乱に陥れている。
従って、危機から脱出するには、まず金融機関に対する政府の監督と規制を再度強化しなければならないだろう。
とはいえ、金融市場を規制でがんじがらめにすれば、今度は経済活動が停滞してしまう。
市場は、経済の安定を維持できる範囲で最大限の自由を与えられなければならない。

金融界全体の存亡に関わる、金融機関の連鎖破綻のような自体は常に起こりうる。もし起こった場合には金融当局が事態を掌握しなければならない。
どれほど高くつき、面倒臭かろうとも、市場参加者は当局にきちんと情報を提出するべきである。
情報提出のコストは、金融市場が実際にメルトダウンを起こした時のコストに比べれば大したことはない。
また、信用創造に関与している金融機関は、自分たちが常に当局に守られている存在であるという事実を受け入れなければならない。そして守られている以上、その代価はきちんと支払わねばならない。
信用創造という経済活動は、どうしても規制を必要とするのである。
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こういう話を読むと、やっぱりJ-SOXは必要とされ続けてしまうのかなと思ったりします。

「私が今までで一番勉強させてもらった本だ!」という某氏の推薦文が載っていたのですが、推薦の仕方の難しさを感じさせる本でした。

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