本のハチマキ部のコピーに「21世紀版『ザ・ゴール』誕生! あえて「ムダ」は残せ!」とあり、TOC(制約理論)信奉者としては即購入、購読した。
概略でいうとTOC理論に、リーン生産方式、シックスシグマの概念を合わせることで、非常に効率性の高く組織の戦略的目標達成に向け、「スピードと方向性」(=velocity)を確立することを目指しすものである。
(本のタイトルの「velocity」とは、単なる速さ(Speed)ではなく、方向性を伴った速さ(Speed with deirection)の意味。)
リーン・シックスシグマ(リーンとシックスシグマを合わせたもの)とTOCは共通する部分もあるが、根本の所で考え方が異なる。
リーン・シックスシグマでは、生産ラインをバランスさせることが重要とされるが、TOCでは、逆ににバランスさせるべきではないと考える。
スループットを最大化するためには、余剰キャパシティも非常に大切で、100%フル稼働しているリソースがいくつもあるのは、逆に非常に非効率と考える。
ラインのキャパシティを短期間で100%フル稼働させるように改善するのは現実的には困難である。
ラインをバランスさせるということは、全てが完璧に100%で動かないといけないということである。ラインをバランスさせた場合は、全てのリソースのキャパシティをそぎ落としてしまって予備のキャパシティがほとんどないので、どのリソースでもボトルネックとなりうる。
簡単にいうと、ラインをバランスさせるというのは理想型であるが、実際には各プロセスにおいてバラツキが生じる。このバラツキを無くしていこうというのがリーン・シックスシグマの考え方であり、バラつく前提でライン全体のスループットを高めるためにはどうしたらいいかというのがTOCの考え方である。
これを、分かりやすく説明するゲームとしてサイコロゲームが紹介されている。
システムのプロセス間に依存関係があって、バラツキが生じる場合、どういうことが起こるのかの傾向が理解しやすい。また、設定によりスループットおよび在庫がどう変化するかが非常にわかりやすい。
DBR(ドラム・バッファー・ロープ)についても理解が深まるゲームである。一度本当にやってみたいと思った。
「制約」というと良くない響きがあるが、『ボトルネック』はボトルにとってフローを調節するという大事な機能を果たしている。
ビールやワインのビンなどに設けているボトルネック(細くなっている所)は、注ぐ際の流れを制御するためにわざわざ設けているくらいである。
「全体(を改善するために行われる一つひとつ)の改善活動は変革を必要とするが、すべての変革が改善に寄与するわけではない」
「全体を改善することと、全てを改善することは同義ではない」
というTOCの考え方をベースに物語がすすんでいくが、その他新しい考え方についても紹介されている。
シングルタスキング <リレーランナー方式>
仕事を受け取ったら、次の三つのうちのどれかが起こるまで走る。
①仕事を終わらせて次の人にバトンタッチする。
②その仕事を終わらせるには他の人の協力が必要な場合、その人からの仕事が来るのを待つために作業を途中で中断する。
③もっと優先度の高い仕事が途中で与えられた場合、今やっている作業を中断して優先度の高い仕事をもってまた走り出す。
TOC理論をリーン・シックスシグマと融合させて新しく「velocity」という概念にしたということであるが、TOC理論の小説としても秀逸である。
余談だが、TOC理論は船川淳志先生の研修を受けた時に、「何かビジネス理論で学んだものはありますか?」という質問があった。(船川先生は研修の時に「教える側も何か持って帰ろう」というスタンスが見えて、さすがと思った記憶がある)
「7つの習慣」なんかの話が出る中で、「エリヤフ・ゴールドラットという人の"TOC"制約理論というのに非常に共感を覚えています。」と回答した記憶がある。
(船川先生は、ちゃんとメモっていた)
今、会社で人材育成について議論しているのだが、「部下にどこまで任せるのか」というテーマのひとつにもこのTOCの考え方が利用できるのではないかと考えている。
それはまた別の機会ということで。
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