2010年12月31日金曜日

『100年予測』

「影のCIA」と呼ばれる情報機関ストラトフォーの創立者兼CEO ジョージ・フリードマンが地政学に基づき今世紀これから世界でおこることを予測した本。
実は今年の3月には既に読み終わっていたのだが、読み込んでいたら年末になってしまったという本。
個人的には間違いなく今年のベスト5に入る本である。

これから21世紀に起こる事として
☞アメリカ・イスラム戦争は近く終局をむかえる。
☞勢力を回復したロシアは、アメリカと第二の冷戦をひきおこす。
☞アメリカへの次の挑戦者は中国ではない。中国は本質的に不安定だ。
☞今後、力を蓄えていき傑出する国は、日本、トルコ、ポーランドである。
☞今世紀半ばには、新たな日本・トルコvsアメリカという世界大戦が引き起こされるだろう。その勝敗を左右するのはエネルギー技術であり、宇宙開発である。
☞そして、今世紀の終わりには、メキシコが台頭し、アメリカと覇権を争う。


信憑性を高めるため、この本では最初に以下の記載がある。

1900年の夏、この頃はヨーロッパが東半球を支配していた。ヨーロッパは平和で、かつてない繁栄を享受していた。実際、ヨーロッパは貿易と投資を通じてこれほど深く依存し合うようになったため、戦を交えることはできなくなった、あるいはたとえ戦争を行ったとしても、世界の金融市場がその重圧に耐えられなくなり、数週間のうちに戦争は終結する、といった説が大真面目に唱えられていた。

1920 年の夏、ヨーロッパは大きな苦しみを伴う戦争によって引き裂かれていた。何年も続いた戦争で数百万人の命が失われた。共産主義がロシアを席巻したが、この先永らえるかどうか定かでなかった。アメリカや日本など、ヨーロッパ勢力圏の周辺部に位置する諸国がいきなり大国として浮上した。不利な講和条約を押し付けられたドイツが近いうちに再び浮上することがないのは確実だった。

1940年の夏、ドイツは再浮上したどころか、フランスを征服し、ヨーロッパを支配していた。共産主義は永らえ、ソビエト連邦は今やナチス・ドイツと同盟を結んでいた。ドイツに立ち向かう国はイギリスただ一国のみで、まともな人の目には、戦争はもう終わっているように思われた。ドイツの千年帝国があり得ないにしても少なくとも今後100年間のヨーロッパの命運はドイツ帝国の支配と決まったようなものだった。

1960年の夏、ドイツは5年とたたずに敗れ、戦争で荒廃していた。ヨーロッパはアメリカとソ連によって占領され、二分された。ヨーロッパの帝国は崩壊の途にあり、その継承者の座をめぐってアメリカとソ連が争っていた。アメリカはソ連を包囲し、その圧倒的な核軍備をもってすれば、数時間のうちにソ連を全滅させることもできた。アメリカは世界の超大国として躍り出た。全ての海洋を支配するアメリカは、核戦力をバックに、いかなる国にも条件を指示し、それに従わせることが出来た。ソ連に望めるのは、せいぜい膠着状態に持ち込むことだった。また、内心では誰もが狂信的な毛沢東の中国を、今ひとつの危険とみなしていた。

1980年の夏、アメリカは7年間続いた戦争に敗れた。相手はソ連ではなく、共産主義国の北ベトナムだった。アメリカは自らの凋落を自他ともに認めていた。
アメリカはベトナムから追われ、続いてイランからも追われた。イランでは、アメリカが支配を明け渡した油田が、ソ連の手中に落ちようとしているかに見えた。
また、アメリカはソ連を封じ込めるために、毛沢東の中国と手を組んでいた。アメリカ大統領と中国国家主席が北京で友好会談を行ったのだ。急速に勢力を増していた強大なソ連を阻止できるのは、中国との同盟しかないように思われた。

2000 年の夏、ソ連は完全に崩壊した。中国は共産主義とは名ばかりで、実質は資本主義化していた。北大西洋条約機構(NATO)は東欧諸国だけでなく、旧ソ連諸国にまで拡大していた。世界は豊かで平和だった。地政学的配慮は経済的配慮の二の次にされ、残る問題といえば、ハイチやコソボといった手の施しようのない国の地域問題だけだと思われていた。

そしてやってきたのが、2001年9月11日である。

20年も経てば世界は一般的には予測もしない方向に変わっていくという歴史が語られる。
それ故、著者の述べる一見荒唐無稽な予測にも読者は耳を傾けるようになる。

結論とすると21世紀はアメリカ覇権の時代が続くということなのだが、いくつか疑念が湧く予測もある。

①現在急成長中の中国は、アメリカのライバル足り得ないのか?
②日本は再び軍国国家となり戦争を引き起こすのであろうか?

これについて、著者は地政学的な観点から理由を述べている。
①中国は実は「島国」であり、国土を拡げていける要素がない。また、人脈本位の癒着体質による投資が横行し、既に不良債権が6000億ドルから9000億ドルと推定される。これは中国のGDPの四分の一から三分の一に相当する。
沿岸部の抵抗や内陸部の不穏を招かずに、豊かな沿岸地域から内陸部へ、富を徐々に再分配を目指す中国の方針が失敗に終わる。海外資本が注ぎ込む莫大な資金が、党そのものの分裂を引き起こし、沿岸都市に対する中央政府の統制力を弱める。
中国は表向きは統一を維持するが、権力は地方に分散していく。

②については、自国のことであり、にわかには日本が軍国主義を復活させるというのは信じられないが、太平洋シーレーンを巡ってやむにやまれず開戦するというストーリーは、第二次世界大戦と同じシチュエーションであり得ない話ではない。
20世紀とは”戦争”の概念も変わってくるとなる(精度がアップし、大量の市民を巻き込むようなことは起こらない)と時代の流れによっては十分あり得る気がしてくるから不思議だ。

いずれにせよ、我々は予測の後半については当たるかどうかを確認する事はできない。
今世紀末のひ孫の世代が幸せに過ごせるように祈るのみである。

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