2008年8月10日日曜日

『脳と気持ちの整理術』


築山節さんという医学博士の書かれた700円の新書で別段ブレイクした訳でもありませんが、脳科学の基づいて「やる気の出ない時」「なんとなく不安な時」の処方箋が書かれていて非常に実践的で良い本です。

その中でいくつかご紹介します。

○業務は簡単な作業から
やる気を出すためには「程よい興奮状態」が望ましく、そのためには体を動かして作業したり、単純(簡単)で集中できる作業を短時間でおこなったりすることが有効です。(脳科学的には「側坐核」と呼ばれる部位を刺激することで「作業興奮」を起こす、ということになります。脳も難しいパワフルな課題をこなすには『助走』が必要ということです。)
難しい仕事ばかりやってやる気低減したときには簡単作業に立ち戻るのは有効なんですね。)

○明日の予定を書き出す
「程よい興奮状態」を効率的にやる気に変換するには脳に対してエネルギーの投資先を明確にする必要があります。
具体的には、明日の予定を書き出してみる、ということだそうです。なぁんだ、と思われるかもしれませんが、これは年齢を経てからこそ重要になるそうです。
上司が部下に「○○くん、今日の午前中の予定はどうなっている?」と聞くのは本人の口から出力させる意味合いで非常に有効だそうです。

○なんとなく不安なとき
実は「なんとなく見えているとき」が一番恐怖を感じます。たくさんの問題を一気に解決しなければならないとき、不安になって逃げ出したくなります。これに対する対処としてはやはり「見える化」です。「気になっていることリスト」をつくって対応を整理していく。
この整理の中で「人に任せられることは人に任せる」というのがあるのですが、この「人」が他人だけではなく、「明日の自分」「明後日の自分」も含まれるというのが面白い概念です。(別に今日やれる仕事を明日やろう、という趣旨ではありません。念のため)
「明日の自分」「明後日の自分」に仕事を割り振るとなると、自分の能力が上がるに従って頼れるパートナーが増えるということですので、積極的に自分を磨こうという気にもなりますよね。

○手付かずの仕事をため込んでしまわないためには
脳は変化に対して反応します。このことを考えると、やろうと思った仕事はその日にとりかかる(とりあえず第一歩を踏み出す)ことが大切です。そもそも、まとまった時間ができたらやろうなんて考えても、まとまった時間などが取れることはまずありません(取れた時には大抵「別のやるべきこと」が待ってます)。
細切れの中で対処すべきことを考えると、脳が興味を持って反応した時に対応するのがベストです。
時間が経って脳の興味が薄れてしまっ時には、人との対話です。対話により人から新しい意見を聞くことで脳が活性化されます。やはりDialogue(対話)は大切なのですね。

○記憶は「入力」ではなく「出力」ベースで考える
本や資料の中にある情報、人の話の中の情報はあくまでも「他人の頭の中にある知識」です。これを「自分の知識」とするための方法としては「出力」すること。「出力」することではじめて脳を通したことになります。そして、「出力」は常に「再入力」につながっています。
最近物忘れが。。。という方は積極的に出力(発信)してみてはいかがでしょうか。
また、記憶には有効期限があります。この記憶の有効期限を引き延ばす唯一の方法は、有効期限内に一度でも思い出すことです(なにやら家電ショップのポイントカードみたいですね)。孔子の言っている「学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや」というのは記憶の強化にも通じている方法なのだそうです。

○感情をコントロールするために
強い快と強い不快が半々だったら±0のような気がしますが、脳の世界ではそうなりません。「好ましいこと、楽なこと」6:「少し嫌なこと、面倒くさいこと」3:「すごく嫌なこと面倒くさいこと」1位の比率になるよう予定を調整するのがよいということです。
面白いのは「すごく嫌なこと面倒くさいこと」もなくしてはいけないのだそうです。脳は基本的に「怠け者(省力化指向)」なので、「嫌なこと面倒なこと」をなくしても、結局今までそう思っていなかったものが「嫌なこと面倒なこと」となってしまうのだそうです。


その他にも「成程」と思うことが満載です。これで700円は安いです。機会があったら是非読んでみください。

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