2008年8月29日金曜日

『偽善エコロジー』


「大変な問題」と「自分に解決できる問題」とは違う。「台風が来るから大変だ」という話と「台風をなんとか食い止める」というのがごっちゃになって語られているのが今の環境問題、台風は止められないので来る変化への対策をとる(台風でいうと雨戸を補強するとか)方が賢明というスタンスで繰り広げられる、武田邦彦さんという工学博士の書いた環境本です。

具体的な数字で様々な「環境の常識」が整理されています。

○レジ袋を使わないでエコバッグをつかうのはただのエゴ
・そもそもポリエチレン製品は他の石油製品を作る時に派生的に生産できる。
・日本の1次エネルギーの国内供給2万3千TJ(テラジュール)のうち、石油は約4割の9,000TJ(重量換算でいうと51億t)。レジで使われている石油重量は25万t程度(全体の約0.05%)なので削減意義がほとんどない。それより代替で使われるエコバッグの方が石油の中のBTX成分を利用したものなのでもったいない。

○割り箸つかわずマイ箸利用はただのエゴ
・森林1haあたり約150㎥の木が育つ。そのうち切り出せるのは70㎥(残りの80㎥は山に捨てる)。切り出したもののうち角材として利用できるのは30㎥で当初の150㎥の20%程度しかない。割箸は途中で発生する端材でつくるので割り箸の利用をやめても意味はない。

○石油をやめてバイオエタノールにするのはただのエゴ
・1kcalの熱を出すバイオエタノールを作るのに人件費の安いブラジルでさえ0.8kcal程度の石油をつかう。(実はバイオエタノールを使ってもco2削減でいうと20%程度しか削減できない)
・そもそも約8億人が飢えていて1,500万人が毎年餓死している現状で食料を燃やす(モノにする)という考え方はナンセンス。
・日本は食料の6割を輸入し、ほぼその半分の3割を捨てていると言われている。そもそもそちらの方が大問題。

○牛乳パックのリサイクルはただのエゴ
・日本の紙の消費量は年間3,000万t。うち牛乳パック分は約40万t。さらにそのうちリサイクルされるのは約10万t(全体消費量3,000万tの約0.3%)。リサイクルの手間ひま考えるといかがか。

○ペットボトルのリサイクルはただのエゴ
・自治体はペットボトル回収するのに約400円/kg使っていて、中国に40〜50円/kg程度で売ってたりする。
・そもそも日本の家庭生ゴミは400kcal/kg。これを燃やすためには1,800kcal/kg必要(発電利用するとすると2,500kcal/kg必要。)いっそのことペットボトルを生ゴミと一緒に燃やしてしまった方が効率的。

○食品トレイのリサイクルはただのエゴ
・プラスチック容器は年間430万t。うち自治体回収は40万tと言われるが、実際にリサイクルされているものを推定すると4万t程度(1%弱)

否定的な話ばかりのなか、
○ダイオキシンは危なくない。
○狂牛病は危なくない。
○アルミ缶のリサイクルは地球にやさしい。
という話の他、
前向きにゴミの分別は、金属、それ以外だけで構わないといった前向きな提言もあったりします。(現在家庭用ゴミを全部まとめて焼却すると①水&co2②飛灰③スラグ④メタルの4つにわかれて、②飛灰以外は危険性がなくリサイクルできるそうです)

北極の氷が融けても海水が上昇するわけではないのは小学校の理科の実験を考えれば自明の理、なんてくだりも妙に説得力があったりします。(温暖化で海水上昇するのは別に北極の氷が融けるからだけでなないんですけどね)

また、リサイクル率はあまり高くなると有害物質の蓄積が問題となるので、有害物質を取り除く技術が高まらないとかえって危ない、ということを「人間の血液だって動脈の酸素運搬系で全血流量の1使うとすると腎臓などの浄化系に3使っている」との例えで示してたりします。

基本的には環境問題は、「もったいない」という心の問題であるはず。モノを節約するのは結果であって動機ではない。というので最後をしめているのには成る程って感じです。

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