2008年8月22日金曜日

『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』


この本は「歴史は繰り返す」を信条とする私に、今の経済における歴史的転換点を過去の歴史になぞらえて書かれている本があるよ、ということで紹介を受けた本です。

現代を「歴史の断絶」の一つとして、そういった「歴史の断絶」時期における経済のありようを示しています。
それによると、今まで「歴史の断絶」は過去2度ほどありました。
①B.C.8000年頃の農業革命により、農産物の翌年持ち越し画可能となり階級社会が誕生した。
②16C、宗教戦争の妥協の産物として「国境」が画定したことで主権がローマ教皇から国家へと移った。資本家=国家だったので資本主義が導入されて国民の生活水準は高まった。

現在は3回目の「歴史の断絶」時期で
③インターネットが「国境」を無意味なものとし、主権国家の退場を促す。「近代」から「新しい中世(ポストモダン)」が誕生し「帝国」の時代を招来する。
とあります。

ここでいう「帝国」とは「国民国家」と対立する概念で、「帝国」は他国の内政問題にも影響力を行使することができ、「帝国」の領土内では格差は大きいまま、とのことです。具体的にはアメリカと中国が「帝国化」していると著者は述べています。(「帝国」なんて言うとスターウォーズを思い出しちゃいますが。)

アメリカは高金利で他国から資金を集めて、それをさらに高利率でリターンの見込める新興国へ投資することで貿易赤字でも大丈夫な仕組みをつくってるとのことです。しかも借金は大抵基軸通貨であるドル建てなのでドルが没落した場合のヘッジもされている。。こう考えるとセッセセッセとアメリカ国債を購入している日本は大丈夫なのかな、という気もしてきます。
また、これが単なる「投資」ではなく、内政干渉も含めて新興国を操っていくというのが『帝国』っていうことのようです。


このような歴史の転換点においては19Cの常識であった「インフレ(成長)が全ての怪我を治す」という考え方はポストモダンに移行した先進国(日本もこれに該当します。「先進国」に対し、BRICSなどの国々をこれから「近代化」する国としています。)では弊害が大きいとしています。
ポストモダン時代においてはいくらマネーサプライを増やしてもインフレにはならず(∵金融経済が実物経済に対して圧倒的優位性をもつようになる)、超低金利は当該国の経済パフォーマンスの悪さを象徴することになります。
(わかりづらいんですが、金融経済が実物経済に対して優位性をもつようになるってのは、最近投機マネーが各種資源マーケットに流れ込んでドンドン暴騰しているのを見るとなんかそうかな、という気にさせられます)

こういった時代の転換期であることを考えると
①21Cの勝者は国境を越える巨額の資本やトヨタなどの「超国家企業」。一方敗者は用意に国境を越えることのできない、近代化する途上国と切り離された先進国のドメスティック経済圏企業と中流階級。
②視点を変えると、近代の仕組みに拘泥する超低金利国が敗者となり、近代と決別できた国が高金利国となって勝者となる。
とあります。

著者は②で日本も高金利にすることで勝者となるべし、ということをいっているんだと思いますが、①の方でいうとうちの会社はまさに「先進国のドメスティック経済圏企業」ですし、自分を振り返ると「中流階級」。う~ん、なんとか打開点を見つけないとまずいって感じでしょうか。

経済的なお話しは中々素養がなくて理解がすすまなかったのですが、現代が「歴史的な転換点」(なんたって1万年前の農業革命に匹敵するくらいの転換点!!)っていうのはびっくりでした。

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