2009年5月1日金曜日

『教育×破壊的イノベーション』


『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・クリステンセン他の著作。
企業におけるイノベーション理論を応用し、教育にもちこむとどうあるべきであるのか、ということが語られている。
具体的には、コンピューターを用いて、個人ごとに学び方をカスタマイズするべきであり、そうなっていくであろうというもの。
ハーバード大学のハワード・ガードナーの8つの知能をベースに、どの知能に長けているかで、効果的な(吸収し易い)教え方は異なるという考え方がベースとなっている。
2012年くらいから本格的にコンピューターを用いたカスタマイズされた教育がすすんでいくはずだという啓蒙の書の感がつよい。

対数軸を設けることでS字カーブを直線化し、「破壊」の時期を予測するという手法などは興味深かった。
(これにより、2012年頃からどんどんコンピューターにカスタマイズされた教育が進展すると予測している。神田昌典氏のS字カーブを続けていくことで企業は存続できるという考え方に近い)


著作内でもイノベーションのジレンマの理論が諸処語られるのだが、翻訳者の櫻井祐子女史によるイノベーションのジレンマ理論の解説が一番分かり易かったかもしれない。

イノベーションのジレンマの理論
1.一般にイノベーションによる性能改良は、顧客の要求(ニーズ)の上昇よりもはるかに速いペースで進む。
2.イノベーションには、確立した市場での性能改良を追求する「持続的イノベーション」と、無消費(消費が何らかの障害によって妨げられている状況)を市場化する「破壊的イノベーション」がある。
3.「破壊的イノベーション」による製品は、既存技術に比べてコストが安いが、最初は性能が劣っているため、既存顧客のニーズを満たすことができず、また既存技術の製品に比べて収益性も低い。
4.その結果、既存技術の成功企業は「持続的イノベーション」の追求を優先する。
5.一方、破壊的イノベーションは少しずつ改良され、やがて既存市場のニーズも満たすようになっていく。
6.以上が「既存成功企業が新技術への転回に失敗することが多い」理由であり、産業のリーダー企業が長期的に入れ替わる理由である。
7.既存企業がこのジレンマから逃れる方法は、既存製品との内部競合を恐れず、破壊的イノベーションを追求する組織を、既存組織から分離して完全に自由にその開発を進めさせることである。

この理論の魅力は、現実を「誰かの怠惰や悪意」によって説明するのではなく、人々の「努力や善意」こそが停滞をもたらすという人間性への深い理解にある。

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