2009年10月19日月曜日

『世界は分けてもわからない』

福岡伸一氏の本。
最近出たので、最新作かと思いきや、連載されていたものをまとめたものであった。
エッセイ風になっていて、「なぜ人は視線を感じるのか」「マッハ・バンドの錯視」「マーク・スペクター事件」など個人的には面白いテーマが続くのだが、全体で見ると一貫したテーマが読み取りづらいものとなっている。


その中でもTRANSPLANTと呼ばれる”臓器移植”の表現は秀逸。
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切り取られ無理矢理はめ込まれた部分としての臓器に対して、身体はその不整合ゆえにけたたましい叫び声をあげる。
激しい拒絶反応が起こり、異物排除のための攻撃が始まる。
不連続な界面に、全身から白血球が集まり、抗体が生産され、炎症が発生する。
なんとか臓器が持ちこたえられたとしても、免疫応答を押さえ込むために、強力な免疫抑制剤が処方されなければならない。
果てしない消耗戦であり、レシピエント(臓器の受け取り手)側は免疫能力全般のレベルダウンを余儀なくされ、新たな感染症に怯えねばならない。
しかし、ここに奇妙な共存関係がなりたつこともある。
レシピエントの免疫系は、やがてその攻撃の手を緩め、ある種の寛容さを示したかに見えるようになり、移植臓器も、完全にしっくりとは行かないまでも、周囲の組織と折り合いをつけるようになる。
文字とおり、植えかえられた植物のごとく、新たな根を張り、茎を伸ばして、血管系や神経系を徐々に再生して、代謝上の連携をむすぶようになる。
ひととき、大きくかき乱された平衡は、徐々に新たな平衡点を見つけるのだ。
生命現象が可塑的であり、絶え間の無い動的平衡状態にあるとはこういうことである。
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福岡氏の次回作に期待したい。

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