2009年10月3日土曜日

Formative Research in 吉野

柏の葉のマンションの共用部に採用予定の家具について、同志社女子大の上田信行先生と京都大学の竹山聖先生が”Formative Research” を行うということで見学して来ました。
場所は遠かったのですが、メタフロアがある吉野のneomuseumまで行って来ました。
このFormative Researchですが、アメリカでセサミストリートの番組をつくる時に上田先生が学んできた手法で、製品のプロトタイプを作って想定する対象者に使わせて(番組の場合見させて)みて、それを客観的に観察、調査して評価し、製品を更にブラッシュアップしていく手法のことです。
当日はデザイナーの方、保育園の方、インターフェイス専門家などなど、様々な人達が参加して色々な意見を出していました。

家具の利用上の安全の話から、上田先生からリスクとハザードのお話がありました。
「ハザードはそれ自体が危険をはらんでいる危害要因のことだが、リスクというのは乗り越えることで得るものがあるとも考えられる。リスクについては全てを排除するというのは実は得策ではない」
というお話を受けて、竹山先生から
「20世紀の建築の理念のひとつとして、ミース・ファンデル・ローエが、”内部空間を限定せずに自由に使えるもの”というユニバーサル・スペースという概念を生み出したが、これだとriskもなければobstacleもない。建築は”包み込むもの”から”挑発するobstacle”を包含するものへと発展すべきである」というお話がありました。
"obstacle"というのは通常「障害物」と訳されますが、英語でのニュアンスでは「乗り越えられるべきもの」という意味合いがあるのだそうです。

「優れたuser interfaceとは、誰でも使えるinterfaceとは限らない。」
という上田先生の話を受けて
「乗り越えられるレベルは各人まちまち。ワークショップにおいては、そのあたりを見極めながらぎりぎりのラインを設定し、さじ加減していくのがファシリテーター。ハードは作ってしまうとその”さじ加減”ができなくなってしまう。そういう意味ではinterfaceとは、ファシリテーターのいないワークショップのようなもの」
という発言が飛び出したりと、非常に刺激的なセッションでした。

上田先生が「空間の使い方のマニュアルをつくろうかと考えたこともあった。しかし、住んでいる人達が自分たちで使い方を工夫していってもらいたいと思っているので、こちらから押し付けた使い方をしてもらうのは本意ではない。悩んだ結果、使い方を触発する家具、すなわちマニュアル(コンセプトを具現化する仕掛け)を内部に包含した家具を置くことで、マニュアルに変えることができるのではないかという発想にいたった。」と話されていて、成る程と思いました。

この家具達は、さらに何度かFormative Research を経てから実際に使われる予定です。
使われる日が来るのが今から楽しみです。

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