2012年11月25日日曜日

Good Design Exhibition 2012

グッドデザイン賞の受賞作品展示会を見てきた。
昨年度までは受賞前の作品が展示されていて、その展示を審査員が見て受賞作品を決めるということで展示にも力が入っていたが、今年は受賞した作品の展示ということもあり非常にシンプルな感じがした。
(「映像も流すべきだったね」などという企業担当者の声が聞こえてきたりで、どこまでシンプルにすれば良かったのか、各企業担当者も手探りだった部分はあったようだ。来年はまた展示のレベル感があがるのかも知れない)

サムスンやLGといった韓国企業の受賞も多く、勢いを感じた。
親子連れで来ていた子供が「あっ、サムスンだ!」と言って駆け寄って製品を見ていた。
彼らに取っては「サムスン」は韓国という外国の企業ブランドではなく、既に身近なブランドだということだ。

製品と供に展示されている映像を始めから終わりまでビッチリVTRに納めている女性がいて、「デザインを参考にする」というレベルを超えた執念を感じた。
最新のデザインを取り入れることで、デザインも「すぐに真似される」時代となっているということだ。
韓国や中国に対して、日本人が感じる「脅威」や「二番煎じ感」というものは20年程前に欧米が日本に対して感じていたものそのものかもしれない。


隣の会場では別展示を設営中。
扉オープンだったので覗かせてもらう。
クレーンを入れて設営できちゃうということは、
ちょっとしたプレハブ住宅は工程次第では設営できちゃうということ。
でも、隣で展示しているんだから、ちゃんと扉は閉めておかないとね。


LG社のOLED TV。薄い!!


NikeのFuel Band。
写真映りが悪いが、デザインはcool。


リコーさんのスペース不要なプロジェクター。
これ、実は下から映写してる優れものです。


消音ギター。デザイン的にも◎。


ネット上ではあまり評判がよくない
「パナソニックのスマート家電」のひとつ。
このパン焼き機のデザインなんて秀逸なんだけどなぁ。


ゴミ拾いトングをデザインしたもの。
こういう古典的かつ実用的なものを、
デザインで使いやすくすることこそ
「デザイン」の真価な気がする。


Roccaというカードゲーム。
やり方等まで把握できなかったが、デザインだけで何やらワクワクする。


YKKさんのエクセラカーブ。
「ありそうでなかった」モノを技術で実現する素晴らしさ。
これを利用した具体的な素敵な製品もあったら、更に良かったかも。


2012年11月24日土曜日

ヌーベル和三盆

柏の葉でピノキオプロジェクトと同時開催だったLOOP ライフフェスタでアーティスト高橋信雅氏のデザインのヌーベル和三盆を購入した。
本当の讃岐和三盆を高橋氏がデザインしたものだ。
テーマはガイコツ。
本当は讃岐丸亀町のお土産らしいのだが、アートは国境(県境?)を越えるということか。


入れ物の箱もガイコツ。これだけでもすでにアート。


小さいが、食べてみると
しっかりほんわか甘い和三盆。


ガイコツon ガイコツ。
ちゃんと一つ一つ和紙にくるまれている。

柏の葉 ピノキオプロジェクト

恒例となった柏の葉のピノキオプロジェクトに行ってきた。
今回は、このピノキオプロジェクトを創り上げたワコールアートセンター、スパイラルの松田さんによるツアーがあり、それに参加してきた。
ピノキオプロジェクトは「子供は街で育てよう」という合い言葉のもと、柏の葉のたくさんの企業が協力して子供達に就業体験を行わせるプロジェクトだ。
一見子供向けのプログラムなのだが、その裏には子供の就業体験を企画することを通じて大人も気付きを得るという深淵な意義が込められている。
スパイラル松田さんの話では「子供に仕事をしてもらうことで、大人はどうしたら仕事が楽しくなるかを考えるようになるんです。」とのこと。


ららぽーと柏の葉のクリスタルコート。
雨だったにも関わらず、お気に入りの「仕事」を求めて子供達がたくさん。



アーティスト高橋信雅氏による落書きワークショップ。
アーティストがフレームを描くだけで、
子供達の落書きがアートになる。



ピノキオプロジェクトにおける貨幣「P!」。
ちゃんとピノキオ銀行で換金(?)される。


ピノキオ食堂で500P!の「柏の葉ごはん」
柏の葉小学校の給食メニューの一つらしい。
見た目以上に美味!


ツアーの最後に、スパイラルの松田さんがピノキオOBの子供の感想文を読んでくれた。
「街にはピノキオのようなイベントがあるのが当たり前だと思っていたけど、他の街ではないってことを知りました。このイベントがこの街の当たり前であり続けて欲しいと思います。」
「当たり前」のレベルを高めることが本当に大切なんだとつくづく思った。

2012年11月18日日曜日

『プラチナタウン』

楡周平氏の2008年の著作。会社の人間から何の気なしに渡された本。
たまたま持っていた本の処分かと思いきや、内容は業務と結構かぶるところあり、意図あって渡したな、という本であった。

四井商事の敏腕部長、山崎鉄郎がちょっとしたチョンボから会社を辞めざるを得なくなり、取り立てて取り柄のない借金だらけの東北の町の町長になるというストーリー。
”取り柄のない町”の諸々の要素が、実は老人が住まうには非常に適した与件であったという、「中立変異」の発見を地でいっているような物語となっている。

何の気なしに渡されて、何の気なしに読み始めたら面白く、止まらなくなってしまった。
地方再生と高齢者介護問題を一気に解決するスキームで物語は進む。
もちろんフィクションなのだが、四井商事の諸々の設定含め、非常にリアリティがある。
4年前に書かれて、未だに似たスキームの取り組みが出てこないというのは、やはり現実的には非常に難しいということか。

これからは「地方分権の時代」と言われ、道州制が現実味をもって議論されている。
地方分権と地方の強み、そして中央の資本がうまくマッチすれば、これからの時代の先端をいくコンパクトシティ、スマートシティが出来てくるのではなかろうか、と一縷の望みを持たせる小説であった。


姫路城改修現場見学

姫路城は現在改修中なのだが、その改修現場そのものを展示物としてしまっているということで拝見しに行った。
・30年前の「昭和の大改修」から30年ぶりの改修。
・仮設設置工事に1年。本工事は昨年4月から2年間、来年の3月末で終了予定なるも、仮設撤去工事もそれから1年間かかる予定。 
・堀の石垣の補修工事は29年で一周。 
この前に見に行った考古博物館の展示手法と比較して、見せ方は今ひとつと言わざるを得ないが、「現場」という現物の迫力は何にも勝る。 
・映画の予告編と一緒で、また本編(完成後の姿)を見に行きたくなる仕掛けともなっている。
・エレベーターで登っていく展示室と現場を隔てるガラスはない方が、現場の匂いやら音という息吹が伝わってより良かったのではないか。(サグラダファミリアは隔て等ないらしい)

それにしても、この姫路城、お菊の井戸があったり、千姫に縁があったり。
26年度の大河ドラマの主人公が黒田官兵衛ということでこれまた姫路城に縁があるらしい。
名物がなく軸を自ら生み出さなければならない地方都市が多い中で、何とも羨ましい限りだ。


仮設の構台と天守閣をとりまく仮設シート。
仮設シートには立面の姿図が。


全面の広場からの遠景。
紅葉もきれいだった。


構台を下から眺めた図。
施工は天下の鹿島建設。


天守閣の現場の展示。
実際に現場で施工をしている姿を見ることができる。

兵庫県立考古博物館

展示の手法について学ぶということで、兵庫県立考古博物館へ行ってきた。
考古博物館の展示を手がけたハンズ・オン プランニングの染川香澄代表の解説付きだったこともあり非常に勉強になった。

<染川さんの事前レクチャー>
・子供がいつでも自由に来られて、土色でない考古学を感じてもらうことを目標とした。 
・事前に利用者調査を数年にわたって行い、展示の協調についてアンケートをとったり行動分析を行ったりした。
・腰の骨の一部の展示では、子供は古代の人間であることがよくイメージできない。本当の頭蓋骨を展示しようとしたら強固な反対意見(古代人とはいえ「遺体」だからダメ)が出て苦労した。 
・石棺に子供を入れる企画も大反対を受けた。五感に訴え、体験的異空間を経験させることにより土色の展示と当時の現物の差をイメージさせる。この強烈な一点突破により、他の展示も同様に今ある姿と当時の姿が異なることをイメージしてもらう仕掛け。実際にやってみて最初に入って大喜びしてくれたのは兵庫県知事。
・展示開始後も定期的に調査して、展示の変更を行いたいが、中々その予算がとれない。
・日本の博物館は一度で全部見せたがる(詰め込み過ぎ)。数日がかりで見る前提で、興味のある見たい展示をじっくり見ることを前提とした方がいいのではないかと思っている。
・アメリカには子供のための博物館がたくさんある。向こうでは祖母が孫に語るためのシナリオ(親子キャプション)の準備もされている。また、ガイドによる案内が一般的となっていて、ガイドについて博物館を聞いて回る慣習ができている。 

<企画広報 村上さんの解説>
・年15万人の来場者。 
・モノと言葉を合致させることで子供は言葉を覚える。 
・考古学的には、伝え過ぎによるイメージの固定⇔厳密な学問としての考古学 というジレンマがある。 
・ハンズオンで自ら手を動かすことで展示内容が自分のものとなっていく。
・古代の船の再現、2m級の楠は大抵天然記念物となっているので、ベイ松で代替。 
・展示には「オチ」が必要。考古博物館では「Past & Future」。 
・小さな子供とお母さんが遊ぶ場所も重要。
・バックヤードツアーは人気。 

お二人の解説を聞いていて、企画をした人がその想いを直接伝えるというのは非常に有効であり、大切なことだと実感した。

考古博物館の外観。入口は土の中に入っていくイメージ。


実際の石を使って制作した石棺。
実際に中に入る企画イベントもあり。
土色の出土品と当時の実際の姿のギャップを感じさせるのにも一役買っている。


洪水による砂礫層の模式を壁面で表現。
大きな粒が沈殿して下部にくるのが分かる。
眼の悪い方が触って分かるようにもなっているとのこと。


兵庫で造った瓦を京都に運ぶまでの困難さを肌身で感じるための展示。
すごろく方式になっていて、停まったところで声を出させる仕掛け。


東京ディズニーシー

久しぶりに東京ディズニーシーに行ってきた。
目当ては新しいアトラクションの「トイストーリー・マニア」。
朝一番8時半に行ったのだが、あわやファストパスも時間切れになるギリギリだった。
今回の気づきをつらつらと。

○床は如何なる所も滑り係数大の素材。なのにメデテレーニアンの前の橋の一部がちょっと滑る素材。(雨が降っていたので普段よりよく認識)
○笑顔のぎこちないスタッフが増えた気がする。(全く定性的な所感)
○トイレの鏡は水栓の前になく、独立して出口のところに。(鏡を独占する人がでるから?)
○劇場はファストパスの抽選版にしていた。(初めて知る)
○コト消費&ジジババ思い出系を受けて写真ビジネスを強化している。(写真撮影するサービスが増えた。)
○今日のジーニー劇場はキャストが上手くて面白かった。(落語と同じでオチが分かっていても楽しめる)
○ダッフィーが流行っているのを初認識。調べてみると実は日本発のキャラクター。やはりOLCは凄い。
○ちょっとずつブラッシュアップされている気がするのだが、何年位ごとにどういう基準で手をいれるのだろうか。
○レイジング・スピリットが止まって、スタッフが調整に入って分かったが、風のゴーゴー音とか、木の軋む音は実は効果音。
○初めて入ったレストラン・ヴォルケイノ。他のレストランと違って客席に料理を運ぶのを手伝うスタッフがいる。人が余っているのか?と思いきや、どうやらそれだけではなく、見渡せないゾーニングになっているため、下げ膳要員が+αの業務としてやっている模様。やはり運営(ソフト)は、ハードと密接に連関する。
○WEBで、どのアトラクションが何分待ちか、ファストパスが何時のモノを発券中かが分かるようになって、利用する側としては戦術を立てやすくなった。

ダッフィーショー。時間制限1時間で2回転。


トイストーリー・マニア。ギリギリで乗れました。
最新の技術をうまく利用していて噂に違わず面白かった!


『結果は「行動する前」に8割決まる』

ちょっと刺激的なタイトルだが、PDCAにおけるPの大切さを言っているということか。
先日読んだPDCAの本と共通するところが結構あった。

「行動」が先か、「結果」が先か。
世界の一流の人のほとんどは、到達するべき「結果」を設定してから、それを達成するために「行動」を定義する。

いわゆるOutput-Base Thinking の勧めということか。
結果からバックキャストしてやることを考えるというのがグローバル標準のよう。

GIGOの法則
Garbage In,Garbage Out.
「ゴミのようなデータを入力しても、ゴミのようなデータしか出ない。」
「良質のインプットは、良質のアウトプットを生み出す」

インプットのための情報は「経験」「メディア」「人」の3つ。
ということで経験のない人間はメディアで勉強するか、人に聞け、ということ。
どんな素敵なOSやソフトを備えていても、インプットする情報が良質でないと、アウトプットもいいものにならない。
経験のない奴は、人とあって勉強せよということだが、経験があってもこれらは必要。

人と会う際に参考になるのが効果的にヒアリングするコツ「STAR」
S:Situation 状況。人がそれぞれどんな状況にあったのか。
TA:Take Action 行動。どんな行動をとったのか。その判断基準はどこになるのか。
R:Result 結果。状況と行動によってどんな結果がもたらされたのか。

これに沿ってヒアリングをすると成功事例であっても失敗事例であっても非常に効果的にヒアリングができるという優れもの。

行動(Do)前のPlan段階が非常に重要ということだが、行動後のCheck段階では
「成功要因(KSF)」と「再現性」に注目する
のが大切とのこと。


プレゼンについてもグローバル標準についての記載がある。
プレゼンのレベルは「事実」「機能」「意味付け」の3段階がある。
①事実:自分も相手も見ればわかるような説明
②機能:自分から相手への機能的な説明
③意味付け:相手に取っての意味付け、理由付け

日米のプレゼンの違い
欧米が「対話型」、日本は「資料型」

①つかみ(アハ)
②共感(ペインポイント)
③盛り上げ(ワオ)


プレゼンで重要な最初のつかみの部分は「アハ(Aha)」をイメージすること。欧米では導入部のひらめきを重視している。その際のキーワードがAha!。
「なるほどね、そうか」という意味。

相手の「ペインポイント」で聞き手の共感を誘う。

教訓(Lessons Learned)を3つのポイントで整理する。
①過去にうまくいったこと(WHAT’S Working Well) 再現性のあるもの。
②過去にうまくいかなかったこと(WHAT’S Not Working Well)
③次ぎに活かす行動計画(CHALLENGE)

「Theree Points(ポイントは3つあります)」は世界標準の整理術。

プレゼン終了後の”So What?”(「それで?」)に答える。
質問は相手の懸念事項を払拭するチャンス。質問を受ける時間を必ず設ける。
質問に答えれば終わりではなく、その返答が相手に取って答えになっているかを確認する
「今の話で、返答になっていますか?」

プレゼンにおいてもメラビアンの法則(3Vの法則:
Verbal 7 - Vocal 38 - Visual 55)は活きている。ファーストインプレッションである”見た目”は大切。


多数の部下を管理するにあたってのノウハウもためになる。
部下を管理する時に、お互いが何をすべきかを文章で共有する。
GOD(目標(Goal)、途中成果(Output)、期限(Deadline))を文章にて共有する。
部下の能力に応じてGODの設定を変える。優秀な人間には「途中成果」を高め、「期限」を眺めに設定、サポートが必要な人間には「途中成果」を低め、「期限」を短めに設定する。
部下のGoalは二種類設定する。1つはストレッチゴール、もう一つはコミットメントゴール。

上司とは優先順位表をつくり、業務の優先順位についてすり合わせる。



日本のやり方と世界標準のやり方。
韓国のサムスン流も勉強になったが、これも非常に参考になる。
でもやはり、90日で成果がでることを最初に行え、というあたりは気をつけないとウォール街の轍を踏むような気がしてならない。
そこもバランスを取りながらということか。


『これだけ!PDCA』

我が社においても「PDCA」「KPI」という言葉が普通に使われるようになってきた。
これらの言葉、新しい言葉ではないにも関わらず、常に重要だと言い続けられる。
言い換えると、常に「出来ていない」ということだ。
基本に立ち返り、何が原因でPDCAサイクルを回すことができないのか、をもう一度学びたいと思い読んでみた。

PDCAがPDで終わってしまうのは、そもそも計画(Plan)が作れていない。
「計画」と違って「計画らしきもの」には「何を」「いつまでに」があっても、「誰が」「どうやって」がほとんど明らかになっていない。
その理由は
(1)計画を作るタイミングが悪い。
決算月と合わせて来期の計画を立てようとするとじっくり考える時間が思うようにとれない。いきおい最低限の体裁を整えた「計画らしきもの」で乗り切ろうという考え方になる。
(2)計画を承認する組織構造に問題アリ
各部門の計画についてまで、一々上層部が検討することはない。抜け漏れのチェックに必要な「何を」「いつまでに」があれば議論するには十分なので、得てして部門に任される「誰が」「どうやって」が抜け落ちる。


いずれも我が社でも心当たりのある内容である。
部門がつくる部門運営方針は「何を」「いつまでに」だけであり、それをブレイクダウンした「誰が」「どうやって」は走りながら考えることとされることが多い。


企業として「何をすべきか」の絞り込みにおいて、非常に有効なやり方が記載されていた。「お客様との約束」を決めるというやり方だ。
「お客様との約束」は経営陣との議論だけでは決めることができず、現場のリーダーを巻き込みながら策定していく必要がある。

「お客様との約束」
「顧客満足度」を高めようと掲げていながら、「ではどんな仕事をすべきか」といった実務面まで具体的に落とし込まれていないことが多い。
「お客様との約束」とは、その約束を果たしていれば会社の利益が上がる、というイメージにつながるものでなければならない。(☞会社も顧客もWIN-WINの関係。exマクドナルドの「できたてを素早く提供する」)
「お客様との約束」が定まれば、その約束を果たすためにやるべき仕事が鮮明になる。
約束に直接関係のない業務は、極力効率かするばあいのよっていはやめることもできる。

「お客様との約束」の事例
サウスウエスト航空 「低価格」「時間を守る」「楽しい空の旅」
お客様との約束は徹底して実現に取り組むことで、競合との明確な差別化要素にまで高めることが可能。
何が本当に必要な仕事で、何が無駄な仕事かを明らかにできることから、会社としては利益があがる。



アクション実行時(A)には”しがらみ”からの脱却が最大のポイント。
(1)評価制度によるしがらみ

人は「評価されるよう動く」という事実。
(2)組織構造によるしがらみ
縦割り組織の弊害。積極的に部門の壁を超えてコミュニケーションをとらなければ、粗組織構造のしがらみはいつまでも解決されない。
(3)習慣によるしがらみ
「ルールだから」「マニュアルだから」ということで思考停止。
「本来どうあるべきなのか」を考えることが必要。
(4)考え方によるしがらみ
自らのうちにある「思い込み」こそが、考え方のしがらみ。
特別な業界などないし、どんな業界であれ特別とも言える。

<形状記憶組織>

そもそも組織というものは、成果が出なければすぐに元に戻ってしまう傾向にある。
人も組織も、もともと取っていた行動(=習慣)を変えるには、大きなストレスがかかる。そのストレスに耐えるためにも、早い段階での成果が必要。

とはいえ、早い段階での成果を求めすぎるとアメリカ金融機関にあったように四半期決算毎に利益が見えないような短期施策以外はやらないということになるので、そのバランスが大切ということか。

使い古されているPDCAも、「何故できていないか」を分析されてみると、なるほどと思うことが多い。
参考にしながら日々の業務を実践したい。

2012年11月11日日曜日

『無名』

沢木耕太郎の作品。
脳出血により入院をした父との亡くなるまでの半年を綴った作品。
実はこの本を読みながら、これは沢木耕太郎の実話なのかどうかの判別がつかなかった。
(実話風に書かれているフィクションはいくらでもある)
読み終わって、実話だと知ってこれは沢木耕太郎の実父へのレクイエムなのだと思い至り、さらに温かい気持ちになった。

この本、懇意にしている代理店の社長さんからのお勧め本であった。
どうして社長が数ある本の中から、私にこの本を勧めてくれたのか、よくわからないのだが、それを考えることがまた楽しい謎かけである。

沢木耕太郎の父が亡くなったのが89歳とのこと。
自分の実父もこれからその年代に近づきつつある。
今のうちに出来る限り親孝行をしておこう。

『勝ち続ける経営』

日本マクドナルドの原田泳幸社長の著書。
2004年にアップルからマックへの異業種転職時に、
「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は買え。買いたくない人はバスに乗らなくて構わない」
と言ってのけ、7年連続で増収という実績を叩き出した原田氏の言には、そんじょそこらのコンサルが言うのとは違った重みがある。

就任時に非常に厳しいスタンスを執ったが、その際に合わせて行ったのが戦略を明快に伝えること。
そして具体的な方針は「基本に立ち返れ。基本以外は何もするな」だった。

後は原田氏のビジネス理念の解説が書かれているのだが、いずれも実績に裏打ちされているものなので説得力がある。
<原田泳幸のビジネス理念>
基本に立ち返る。
強さをより伸ばす。
リサーチで企画をするな。
サイエンスとサイコロジー。
リスクを取らないリスク、リスクを取る体力。
ビジネスに終わりはない。成功した時こそ危機。
周りの変化に合わせるのではなく、自ら変革を起こす。
非常識を常識に。できない理由はチャンスである。
ビジネスはスピード。決定する前に実行せよ。
文化を浸透させるには3年必要。繰り返し何度も伝える。
解決のリーダーシップが執れない人材は要らない。
職位ではなく職種。
組織とは戦略をスピーディーに実行するためのもの。
後継者育成はマネジメントの使命である。
売上の伴わないブランド制作は無意味。
世界のルールで戦え。
日本の文化を知り世界の文化を知る。



その他にもいくつか参考になる考え方があった。
その1、後継者について
よく社員に「あなたは3年以内にどういう後継者をつくりますか?」と聞く。
これは「あなたの後継者をつくらない限り、あなたの次の成長の機会は生まれないでしょう?」という意味。
この意識改革も含めて人事の考え方を変えるのには大変苦労した。
ポイントは1に後継者、2に後継者、3に後継者。人材のパイプラインを必ずつくっていく。これがないと企業の成長はありえない。

企業がgoing concern であることを考えると常にどのポジションであっても後継者を考えていく必要があるという考え方は、当たり前のようで実践している人は少ない。

その2、キャリアについて
「キャリアを自分で考えるな」
自分でキャリアを求めていくようなことをしても、絶対その通りになるわけがない。
キャリアプランをつくるというのは自分の可能性を絞るということ。大抵思った通りにならない。
キャリアとは周りから来るもの。その日、その日、自分の命題に関して周りが期待する、上司が期待する以上の結果を出す。そういうことをずっと考えていれば、キャリアというもの必ず周りから来る。
チャンスに巡り合うためには、期待以上のことを毎日やることだけ。

自分自身が「将来の夢」といったBig Picture を持たない(持てない)でいたので、なるほどこういう考え方もあったのかと膝を打つ思いがした。

その3、トラブルメーカーについて
何も問題を起こしていない社員は仕事をしていないと思っている。
チャレンジすれば、必ず二次的な課題を抱える。会社もそう。改革をすればするほど、それに伴う痛みもあるし、そのときそのときの課題がある。
「問題を起こしていない社員は仕事をしていないと思え」
これぐらい極端に意識を変えないと、誰も新しいことにチャレンジしない。
一度失敗することで、そこからまた新しい知恵が出る。これがあるべき姿。
(ただし、同じ失敗を二度三度繰り返す人間はいただけない)
トップが反対を押し切ってチャレンジすれば、社員もチャレンジするようになる。

日々「トラブル」続きの人間には非常に勇気づけられる考え方である。
先日、とある経営者の人と話をしていて、「管理職は部下にチャレンジをさせて小さな失敗はどんどんさせるべき。大きな失敗とならないようにセーフティネットを張って部下に任せることが管理職の仕事」という発言をしたところ、
「セーフティネットを張るのは経営の仕事。管理職も含め現場はチャレンジに邁進すればいい」
という話をもらって、やはり経営者とは器が大きいと思ったことがあった。

その他にも、なるほどと思わせる話が満載。
原田さんには直接お会いして話を聞いてみたいと思った。



2012年11月4日日曜日

カップヌードルミュージアム

ミュージアムの研究を行うため(?)横浜はみなとみらいにあるカップヌードルミュージアムを見学してきた。
想定以上に大きい。
シンプルな外観だがディテールは非常に凝っている。


インスタントラーメンの歴史。
歴史を、写真スポット足りうるような
見た目美しくデザインしているのがポイント。



直島の地中美術館の
ウォルター・デ・マリアのアート作品のような階段。
これから中に入るのにワクワクさせるのには十分。

総合プロデューサーが佐藤可士和氏。デザインのトーン&マナーがきっちり統一されていて気持ちがいい。
同じ内容を手を変え品を変え繰り返し述べている、というのは大事なことは一度では伝わらないということを認識した上でフォーカスしたということなのであろう。
2階にはシンプルだが力強いメッセージを持った展示。インタラクティブなものも多く子供でも楽しめる。
展示の手法として時間軸による年表方式というのは人が認知するのに分かりやすい手法だと再認識した。
3階には参加型のマイカップヌードルファクトリー、4階には自らがカップヌードルとなって遊べる体験型のカップヌードルパークと世界のワールド麺ロード、と企画満載。
その割にごちゃごちゃ感がないのが流石、佐藤可士和氏デザイン。
うちの会社の商品を佐藤氏にデザインしてもらったらどんなモノになるのだろうと夢想してみる。
わかっちゃうようなら佐藤氏の代わりにデザイナーになれるということか。

スマートイルミネーション横浜

スマートイルミネーション横浜を見てきた。

『balloomination』
竹澤葵
中に入って楽しめるのでインスタレーションとしての秀逸。


『Comfort#11』
Lang/Baumann
スイス人大物アーティストのラング&バウマンの作品。
乗船してのクルーズツアーもあったらしい。


象の鼻テラス前でのパフォーマンス。
「光る衣装」
この他にも握手するとハートが表れるバージョンも。


『未知への鼻』
鈴木康広
風が強くてバルーンが動いてたのがまた楽しい。

神奈川県庁舎

他にも諸々あって、全てを見切ることはできなかった。
ちょっと肌寒い風の強い日に行ってしまったので寒かったが、その分幻想的なイルミネーションが堪能できた。
たくさんの人が写真を撮影したり、インタラクティブなアートを楽しんでいた。
光の衣装をまとった団体が走るというSpeed of Light Yokohamaも観たかったのだが、観ることあたわず。
またの機会にみてみたい。

予備校説明会

高校生の息子が行っている予備校が11月から新学期ということで説明会に行ってきた。
自分たちの時代の”予備校”というと、マンモス会議室で有名講師が講義を行う形式のイメージだったが、最近の予備校は大分方向性が異なるようだ。
まず、予備校なのに「人間力。そのためには心の指導が必要」ということを冒頭に掲げている。昔の予備校であれば大学受験を乗り切るために如何に成績を上げるかのスキルを磨くことが重要で、「心の指導」なんてチャンチャラおかしいということだったと思うが、それが変わってきている。
説明してくれた先生が、
「予備校も大学受験で生徒を何人入れたかの実績数字を伸ばすためには、試験で点を取るためのスキルをつけさせたり、試験問題範囲を的中させるだけでは限界があり、如何に子供達のモチベーションを高めて学力をつけさせるかが大切だからだ」とポロッとおっしゃっていた。
建前の世界で「人間力」を標榜しているのではなく、受験戦争を勝ち抜くためにはベースとなる人間力から磨いていかないと限界がある、という必要性からの方向転換ということだ。企業が「人材育成」の重要性を唱えるようになったのと同じ理由かもしれない。

日本の子供達を世界で活躍できる人財にしたい、ということについては共感できたのだが、「現代の難しい世界の課題を解決するのは、今の子供達だ」とするくだりについては、「なんで今の大人(我々)じゃダメなの?」と思ってしまった。
まずは我々が必死に課題解決を目指し、それでダメだった部分を今の子供達に引き継いでいくということのはずだが、それをいきなり「課題を解決するのは子供達」というのでは、重荷を背負わされる子供達もたまらないのではないか。

それはさておき、子供の学力と入試の時系列の分析で面白かったのが、マスで捉えると一流校に入る生徒達もそうでない生徒達も学力(テストの点数)の伸びは一緒ということ。
だから予備校の立場からすると「早く始めた者勝ち」ということになるのだが、これには一定の説得力があった。
車で高速道路を使って遠方まで行くとき、時速を100kmから120kmにするとかよりも、早く出発する、もしくは休憩を取らないといった方が到着時間に大きく寄与する。長距離走である受験勉強も同じことが言えるということか。

高校3年生の1日の勉強時間を難関校に合格した生徒と不合格だった生徒で比較すると、5.5時間/日と5.4時間/日でほとんど違いがないのだそうだ。つまり、高校3年生になってからは皆勉強するので差がつくのはその前段階ということらしい。
(そうすると今度は、その前段階の高校2年生での合否における勉強時間の差が気になるが・・)

一つの戦略方針として面白かったのが、「人間初めてのことでは余り力を発揮することができない。だから、まずは未習分野をなくすべく一通りのテスト範囲を勉強してしまうこと」というもの。
また、テストの成績は投下した時間(勉強した時間)と比例して伸びるわけではなく、べき乗的に伸びる。
従って「やり続けるとすぐには伸びないが、ある時突然伸び始める」というのは自分の実感とも合致している。

理屈では分かっていても、自分でやるのは難しいし、子供にやらせるのはもっと難しい。。トホホ。

2012年11月3日土曜日

『竹中式イノベーション仕事術』

ご存知竹中平蔵氏の著作。
2006年に大臣を辞めて、現在は慶応大学の教授だけでなく、パソナの取締役会長もやっているとは初めて知った。
竹中氏が、仕事や人生において闘う(挑戦する)にあたって重要と考えているポイント12を述べた本。
正直12もあるとポイントとしては拡散気味であるが、一つ一つのエピソードに面白いものが多く、購入して読んでみた。


○どこで働くか」より「誰の下で働くか」。
「仕事が楽しければ、人生は極楽だ。仕事が義務なら、人生は地獄だ」
ゴーリキーの『どん底』の一節。

○10年後の自分の履歴書を書く。そしてそれをバックキャストすることでいつまでに何をやるべきかを詳細に描き出す。

☞渡邉美樹さんの「夢に日付を」と同じ発想。大切なのは分かるが中々実践できない人が多いのではないか。正直自分もできていない。
○B to B(Back to Basic:常に基本に立ち返って判断をチェックすること) はとても重要。

☞今更ながらであるが、大臣までやった人がこんな当たり前のことを言うあたりに基本に立ち返ることの重要性と難しさがあるのだと思う。
○判断力、決断力という「意思決定」はデジタル。「やる」か「やらない」かの2種類しかない。
意思決定というものがデジタルであるとすると、どこかで何かを切り捨てて、割り切る必要がある。何かを選択するということは、間違いなく別の何かを捨てること。

☞これはちょっと嫌な言い方をすると「大臣っぽい考え方」で、現場では必ずしもデジタルな意思決定だけではない。0か1かの選択肢の中で、第三の道(0.5)を模索するのはとても大切。実際にそういった現場の創意工夫により世の中は成り立っている。
現場で考えに考え抜かれた内容が上がってきた時には、0.5という道は残されていないということであり、判断は0か1かのデジタルで行うということだと思う。
上に行けば行くほど、デジタルに明確に判断をする覚悟が必要であるという教訓と思う。

○プレーヤーは各々それぞれの「目的関数」を持っている。
相手と交渉を進めたり、プランを実現するための戦略を考えるとき、相手の目的関数を明確に見抜くことが重要。人は驚くほどシンプルに自分の目的関数に従って行動している。
正しい情報に基づいて、かつ目的関数を見抜いて正しい判断をすると、景色が一変することがある。

☞「目的関数」という表現が経済学者っぽいが、人それぞれに最大化したい内容が違っているというのはその通りであり、そこを見誤ると判断を間違うということであろう。
○情報があふれる中では、むしろ情報を選別する力が重要になっている。
以前は情報にアクセスできる力が重要だったが、今はアクセスは簡単にできるので、その情報をしっかり選別する力が重要になっている。

☞更に言うと、選別する力とはすなわち実行力ではないかと考えている。
昔は情報を思いついた人間に成功のアドバンテージがあったが、今はほとんどの分野で実行しなければ何のアドバンテージもない状態となっている。
だからこそ、起業家が色々なアイデアを実践できることの重要性が言われているのだと思っている。
○情報のあふれたネット時代は「馬鹿を相手にしない」ということがすごく重要。

☞これも表現的にはあまり共感できないが、言っている内容については同意できる。
別の表現で「時間がとても大切」ということを竹中氏は言っているので、「付き合う人は選ぶべし。ネットの誹謗中傷は相手にしない」と言った表現の方がいいのではないか。
大臣の地位にいた人から「馬鹿は相手にしない」と言われると、カチンと来る人も多いので不用意に敵をつくることになってしまってますぞ。
○洞察力を高めるためには、歴史に学ぶこと、古典から学ぶこと。

☞まったく同感。更に言うと強い組織を作るためには生物の進化の歴史に学ぶべきと考えている。


○東京の街は震度5でも大丈夫だった。震度6の仙台でも街はつぶれていない。
地震の3分後には全ての市町村に津波警報が発令されている。
東日本大震災では約2万人の人が亡くなった。しかし、津波の被害地域には50万人の人がいた。つまり約48万人の人は逃げることが出来て助かったというのも一面の事実である。
ほぼ同じ規模の地震が起こった2004年のスマトラ島沖大地震の時には約23万人の方が亡くなっている。
地震が発生したとき、東北地方では27編成の新幹線が時速200kmで走行していた。しかし、地震が到達する約1分前に全ての列車にブレーキがかかり減速したため、脱線することはなかった。これは2004年の新潟県中越地震での脱線の反省を活かし、システムを改善したためである。
あらゆる事象はポジティブな面とネガティブな面があるが、その双方を発信していかなければならない。

☞これはとても大切な考え方だと思った。物事にはいい面と悪い面がある。
竹中氏は「人間万事塞翁が馬」の諺も別パートで引いて説明しているのだが、物事の両面を認識するだけでなく、発信することが大切という考え方にはハッとさせられた。

その他にも「自分の宇宙を描いた」人達ということで有名な経済学者がどのような世界観をもち、自説を展開したかの分かりやすい説明がある。経済学の先生らしいのだが、初心者にも分かりやすい内容であり、経済学の素人としては勉強になった。

最後にオックスフォード大学のオール・ソウルズ・カレッジの日時計の言葉。
「時間とは消滅するものなり、かくしてその罪は我らにあり」
時間を無駄に使うことは罪である。最近痛感する内容である。

Time is Money!