2012年11月3日土曜日

『竹中式イノベーション仕事術』

ご存知竹中平蔵氏の著作。
2006年に大臣を辞めて、現在は慶応大学の教授だけでなく、パソナの取締役会長もやっているとは初めて知った。
竹中氏が、仕事や人生において闘う(挑戦する)にあたって重要と考えているポイント12を述べた本。
正直12もあるとポイントとしては拡散気味であるが、一つ一つのエピソードに面白いものが多く、購入して読んでみた。


○どこで働くか」より「誰の下で働くか」。
「仕事が楽しければ、人生は極楽だ。仕事が義務なら、人生は地獄だ」
ゴーリキーの『どん底』の一節。

○10年後の自分の履歴書を書く。そしてそれをバックキャストすることでいつまでに何をやるべきかを詳細に描き出す。

☞渡邉美樹さんの「夢に日付を」と同じ発想。大切なのは分かるが中々実践できない人が多いのではないか。正直自分もできていない。
○B to B(Back to Basic:常に基本に立ち返って判断をチェックすること) はとても重要。

☞今更ながらであるが、大臣までやった人がこんな当たり前のことを言うあたりに基本に立ち返ることの重要性と難しさがあるのだと思う。
○判断力、決断力という「意思決定」はデジタル。「やる」か「やらない」かの2種類しかない。
意思決定というものがデジタルであるとすると、どこかで何かを切り捨てて、割り切る必要がある。何かを選択するということは、間違いなく別の何かを捨てること。

☞これはちょっと嫌な言い方をすると「大臣っぽい考え方」で、現場では必ずしもデジタルな意思決定だけではない。0か1かの選択肢の中で、第三の道(0.5)を模索するのはとても大切。実際にそういった現場の創意工夫により世の中は成り立っている。
現場で考えに考え抜かれた内容が上がってきた時には、0.5という道は残されていないということであり、判断は0か1かのデジタルで行うということだと思う。
上に行けば行くほど、デジタルに明確に判断をする覚悟が必要であるという教訓と思う。

○プレーヤーは各々それぞれの「目的関数」を持っている。
相手と交渉を進めたり、プランを実現するための戦略を考えるとき、相手の目的関数を明確に見抜くことが重要。人は驚くほどシンプルに自分の目的関数に従って行動している。
正しい情報に基づいて、かつ目的関数を見抜いて正しい判断をすると、景色が一変することがある。

☞「目的関数」という表現が経済学者っぽいが、人それぞれに最大化したい内容が違っているというのはその通りであり、そこを見誤ると判断を間違うということであろう。
○情報があふれる中では、むしろ情報を選別する力が重要になっている。
以前は情報にアクセスできる力が重要だったが、今はアクセスは簡単にできるので、その情報をしっかり選別する力が重要になっている。

☞更に言うと、選別する力とはすなわち実行力ではないかと考えている。
昔は情報を思いついた人間に成功のアドバンテージがあったが、今はほとんどの分野で実行しなければ何のアドバンテージもない状態となっている。
だからこそ、起業家が色々なアイデアを実践できることの重要性が言われているのだと思っている。
○情報のあふれたネット時代は「馬鹿を相手にしない」ということがすごく重要。

☞これも表現的にはあまり共感できないが、言っている内容については同意できる。
別の表現で「時間がとても大切」ということを竹中氏は言っているので、「付き合う人は選ぶべし。ネットの誹謗中傷は相手にしない」と言った表現の方がいいのではないか。
大臣の地位にいた人から「馬鹿は相手にしない」と言われると、カチンと来る人も多いので不用意に敵をつくることになってしまってますぞ。
○洞察力を高めるためには、歴史に学ぶこと、古典から学ぶこと。

☞まったく同感。更に言うと強い組織を作るためには生物の進化の歴史に学ぶべきと考えている。


○東京の街は震度5でも大丈夫だった。震度6の仙台でも街はつぶれていない。
地震の3分後には全ての市町村に津波警報が発令されている。
東日本大震災では約2万人の人が亡くなった。しかし、津波の被害地域には50万人の人がいた。つまり約48万人の人は逃げることが出来て助かったというのも一面の事実である。
ほぼ同じ規模の地震が起こった2004年のスマトラ島沖大地震の時には約23万人の方が亡くなっている。
地震が発生したとき、東北地方では27編成の新幹線が時速200kmで走行していた。しかし、地震が到達する約1分前に全ての列車にブレーキがかかり減速したため、脱線することはなかった。これは2004年の新潟県中越地震での脱線の反省を活かし、システムを改善したためである。
あらゆる事象はポジティブな面とネガティブな面があるが、その双方を発信していかなければならない。

☞これはとても大切な考え方だと思った。物事にはいい面と悪い面がある。
竹中氏は「人間万事塞翁が馬」の諺も別パートで引いて説明しているのだが、物事の両面を認識するだけでなく、発信することが大切という考え方にはハッとさせられた。

その他にも「自分の宇宙を描いた」人達ということで有名な経済学者がどのような世界観をもち、自説を展開したかの分かりやすい説明がある。経済学の先生らしいのだが、初心者にも分かりやすい内容であり、経済学の素人としては勉強になった。

最後にオックスフォード大学のオール・ソウルズ・カレッジの日時計の言葉。
「時間とは消滅するものなり、かくしてその罪は我らにあり」
時間を無駄に使うことは罪である。最近痛感する内容である。

Time is Money!

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