2012年11月18日日曜日

兵庫県立考古博物館

展示の手法について学ぶということで、兵庫県立考古博物館へ行ってきた。
考古博物館の展示を手がけたハンズ・オン プランニングの染川香澄代表の解説付きだったこともあり非常に勉強になった。

<染川さんの事前レクチャー>
・子供がいつでも自由に来られて、土色でない考古学を感じてもらうことを目標とした。 
・事前に利用者調査を数年にわたって行い、展示の協調についてアンケートをとったり行動分析を行ったりした。
・腰の骨の一部の展示では、子供は古代の人間であることがよくイメージできない。本当の頭蓋骨を展示しようとしたら強固な反対意見(古代人とはいえ「遺体」だからダメ)が出て苦労した。 
・石棺に子供を入れる企画も大反対を受けた。五感に訴え、体験的異空間を経験させることにより土色の展示と当時の現物の差をイメージさせる。この強烈な一点突破により、他の展示も同様に今ある姿と当時の姿が異なることをイメージしてもらう仕掛け。実際にやってみて最初に入って大喜びしてくれたのは兵庫県知事。
・展示開始後も定期的に調査して、展示の変更を行いたいが、中々その予算がとれない。
・日本の博物館は一度で全部見せたがる(詰め込み過ぎ)。数日がかりで見る前提で、興味のある見たい展示をじっくり見ることを前提とした方がいいのではないかと思っている。
・アメリカには子供のための博物館がたくさんある。向こうでは祖母が孫に語るためのシナリオ(親子キャプション)の準備もされている。また、ガイドによる案内が一般的となっていて、ガイドについて博物館を聞いて回る慣習ができている。 

<企画広報 村上さんの解説>
・年15万人の来場者。 
・モノと言葉を合致させることで子供は言葉を覚える。 
・考古学的には、伝え過ぎによるイメージの固定⇔厳密な学問としての考古学 というジレンマがある。 
・ハンズオンで自ら手を動かすことで展示内容が自分のものとなっていく。
・古代の船の再現、2m級の楠は大抵天然記念物となっているので、ベイ松で代替。 
・展示には「オチ」が必要。考古博物館では「Past & Future」。 
・小さな子供とお母さんが遊ぶ場所も重要。
・バックヤードツアーは人気。 

お二人の解説を聞いていて、企画をした人がその想いを直接伝えるというのは非常に有効であり、大切なことだと実感した。

考古博物館の外観。入口は土の中に入っていくイメージ。


実際の石を使って制作した石棺。
実際に中に入る企画イベントもあり。
土色の出土品と当時の実際の姿のギャップを感じさせるのにも一役買っている。


洪水による砂礫層の模式を壁面で表現。
大きな粒が沈殿して下部にくるのが分かる。
眼の悪い方が触って分かるようにもなっているとのこと。


兵庫で造った瓦を京都に運ぶまでの困難さを肌身で感じるための展示。
すごろく方式になっていて、停まったところで声を出させる仕掛け。


0 件のコメント: