2012年11月11日日曜日

『勝ち続ける経営』

日本マクドナルドの原田泳幸社長の著書。
2004年にアップルからマックへの異業種転職時に、
「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は買え。買いたくない人はバスに乗らなくて構わない」
と言ってのけ、7年連続で増収という実績を叩き出した原田氏の言には、そんじょそこらのコンサルが言うのとは違った重みがある。

就任時に非常に厳しいスタンスを執ったが、その際に合わせて行ったのが戦略を明快に伝えること。
そして具体的な方針は「基本に立ち返れ。基本以外は何もするな」だった。

後は原田氏のビジネス理念の解説が書かれているのだが、いずれも実績に裏打ちされているものなので説得力がある。
<原田泳幸のビジネス理念>
基本に立ち返る。
強さをより伸ばす。
リサーチで企画をするな。
サイエンスとサイコロジー。
リスクを取らないリスク、リスクを取る体力。
ビジネスに終わりはない。成功した時こそ危機。
周りの変化に合わせるのではなく、自ら変革を起こす。
非常識を常識に。できない理由はチャンスである。
ビジネスはスピード。決定する前に実行せよ。
文化を浸透させるには3年必要。繰り返し何度も伝える。
解決のリーダーシップが執れない人材は要らない。
職位ではなく職種。
組織とは戦略をスピーディーに実行するためのもの。
後継者育成はマネジメントの使命である。
売上の伴わないブランド制作は無意味。
世界のルールで戦え。
日本の文化を知り世界の文化を知る。



その他にもいくつか参考になる考え方があった。
その1、後継者について
よく社員に「あなたは3年以内にどういう後継者をつくりますか?」と聞く。
これは「あなたの後継者をつくらない限り、あなたの次の成長の機会は生まれないでしょう?」という意味。
この意識改革も含めて人事の考え方を変えるのには大変苦労した。
ポイントは1に後継者、2に後継者、3に後継者。人材のパイプラインを必ずつくっていく。これがないと企業の成長はありえない。

企業がgoing concern であることを考えると常にどのポジションであっても後継者を考えていく必要があるという考え方は、当たり前のようで実践している人は少ない。

その2、キャリアについて
「キャリアを自分で考えるな」
自分でキャリアを求めていくようなことをしても、絶対その通りになるわけがない。
キャリアプランをつくるというのは自分の可能性を絞るということ。大抵思った通りにならない。
キャリアとは周りから来るもの。その日、その日、自分の命題に関して周りが期待する、上司が期待する以上の結果を出す。そういうことをずっと考えていれば、キャリアというもの必ず周りから来る。
チャンスに巡り合うためには、期待以上のことを毎日やることだけ。

自分自身が「将来の夢」といったBig Picture を持たない(持てない)でいたので、なるほどこういう考え方もあったのかと膝を打つ思いがした。

その3、トラブルメーカーについて
何も問題を起こしていない社員は仕事をしていないと思っている。
チャレンジすれば、必ず二次的な課題を抱える。会社もそう。改革をすればするほど、それに伴う痛みもあるし、そのときそのときの課題がある。
「問題を起こしていない社員は仕事をしていないと思え」
これぐらい極端に意識を変えないと、誰も新しいことにチャレンジしない。
一度失敗することで、そこからまた新しい知恵が出る。これがあるべき姿。
(ただし、同じ失敗を二度三度繰り返す人間はいただけない)
トップが反対を押し切ってチャレンジすれば、社員もチャレンジするようになる。

日々「トラブル」続きの人間には非常に勇気づけられる考え方である。
先日、とある経営者の人と話をしていて、「管理職は部下にチャレンジをさせて小さな失敗はどんどんさせるべき。大きな失敗とならないようにセーフティネットを張って部下に任せることが管理職の仕事」という発言をしたところ、
「セーフティネットを張るのは経営の仕事。管理職も含め現場はチャレンジに邁進すればいい」
という話をもらって、やはり経営者とは器が大きいと思ったことがあった。

その他にも、なるほどと思わせる話が満載。
原田さんには直接お会いして話を聞いてみたいと思った。



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