2008年9月4日木曜日

『チーム ハックス』


チームならではの相乗的な効果を最大化するにはどうしたらよいか、というテーマの本です。
これからは「(リーダーシップではなく)メンバーシップがチームを動かす」ということを基本姿勢に書かれています。

「ホーソーン研究」
社会心理学者のジョン・メーヨーがウェスタンエレクトリック社のホーソーン工場で行った実験です。
照明の明るさと作業効率の相関を調べるべく、照明の明るさをあげたら作業効率が上がりました。ところが、色々ためしてみると照明を元に戻しても作業効率はもっと上がることが判明。。!?
工場における作業効率は、作業上の物的環境の良し悪しよりも、むしろ働く人間同士の関係が良好であるかどうか、自分たちの仕事に特別の関心が払われているかどうか、工場の監督官や検査官が公正に評価してくれるかどうか、といいったものにこそ左右されるということ。
お互いをよく認知しあうだけで、作業効率は著しくアップするということです。
というわけで他己紹介はとても有益なわけです。

レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」
「わかっているようだが、一人では解けない」問題と「ひとりでできる」問題との水準のギャップのことを「発達の最近接領域」といいます。
ヴィゴツキーによると、教育とは「発達の最近接領域」にあったものでなければならず、その領域を暫時押し上げていくような人が教師でなければならないとのことです。
わかりやすくいうと「明日の能力を今日体験できる」ようにするのが教師の勤めということです。
また、ヴィゴツキーは「あらゆる高次精神機能は発達過程において2度現れる」と言っています。
この2つとは「精神間機能」と「精神内機能」です。
何かを他の人に助けてもらいながら達成することができたとき、それは「精神間機能」が働いたということになります。その後、同じような状況になった時に、助けてもらったときのことを思い出しながら独りで達成することができる、これは「精神内機能」が働いたということです。
お互いがお互いの「発達の最近接領域」を押し上げる関係になる、すなわち相互コーチの関係になるためにもリーダーシップ型ではなくメンバーシップ型が望ましいとしています。

社会心理学における「状況対応理論(SL理論)」によると、常によいリーダーであろうとするには、常に同じタイプのリーダーであってはなりません。未成熟なメンバーのチームと成熟したメンバーが揃ったチームではリーダーに望まれるリーダーシップは全く逆になります。
そんなことも考えるとこれからは「リーダーシップ」ではなく、「メンバーシップ」が大切であるというのが著者の論旨です。


◎チームミーティングでは予定ではなく実績を共有する。
<理由その1>
本来であればチームの各メンバーが予定を表明することによって、プロジェクト全体で重複した作業や「待ち」を発生させないための手段となるのですが、往々にしてチームミーティングという”税関”をすり抜けるためにメンバーが進捗状況の実態を隠し、プロジェクトのあるべき姿を表明することになります。だから予定ではなく実績を共有するべきです。
<理由その2>予定を共有すると「未来の自分のイメージ」に実際に作業する自分が縛られてしまうのでは?という不安が生じます。それを過去の成功体験の共有とかえることで「予定を共有する」目的は達成できます。
そうすることで「予定を守る」ことよりも「成果を出す」ことに集中できるようになります。(「有言実行」というプレッシャーで自分を追い込むのではなく、「成果を発表できる」というインセンティブで押し上げるということです。)

◎チームで「スクリプト」を共有する。
スクリプトとは、心理学でいう「旅行日程表」のようなもの。(「暗黙知」的なものでしょうか)
人が円滑にコミュニケーションできるのは、すでにスクリプトが頭にはいっているからです。
だから当たり前のことでも共有することはとても大切です。

その他にも
◎自分以外のメンバーの活動を視野にいれると、自分のやる気を引き出す呼び水になる。
◎最初の壁だけ一緒に乗り越えるため、最初のとりかかりだけ一緒に行う。
◎その人を知りたければ「今後どうしたいか」を聞く。
など、なるほどというやり方が満載です。

チームで成果を出したい方にはお勧めです。

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