2008年9月20日土曜日

『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』 石田淳

行動分析学(behavior analysis)はアメリカの心理学者スキナーの「抽象的な概念や計測できない要素をいっさい排除しよう」という考え方の分析学です。

要旨は以下の通り。

組織においてメンバーが、望まれる行動をとれない理由は次のいずれか。
○仕事のやり方がわかっていない場合
○仕事のやり方はわかっているのだが継続できない場合

やり方が分かっていない場合には行動を分解しチェックリスト化する。
”結果を出すための行動”を発見するのがリーダーの仕事。

行動分析でいうところの”行動”とは—MORSの法則(具体性の法則)
Measured(計測できる)
Obserbable(観察できる)
Reliable(信頼できる)
Specific(明確化されている)
「売り上げを増やす」というのは行動分析でいう”行動”にはあたらない。

やり方はわかっているのだが継続できない場合には「リインフォース(強化)」を用いる。
リインフォースとは行動を増やす手順である。リインフォースをもらたす目的となるものを「リインフォース因子」という。
①リインフォース因子は必ず行動の後に与えられる。(子供が勉強すると約束して飴玉をもらった場合、飴玉は”勉強”をリインフォースしたのではなく、”約束”をリンフォースしたもの)
②リインフォース因子は行動を必ず増やす。(うまくいかないものはリインフォース因子ではない)
③リインフォース因子はTPOにより変化する。
④リインフォース因子は回数が多いと効果が薄くなる(satiation:飽和)
リインフォースには積極的なリインフォース(R+)と消極的なリインフォース(R−)がある。

行動を減らす要素もある。罰(P+)とペナルティ(P−)である。
リインフォースによって増えつつある行動は、リインフォースが得られなくなると元に戻ってしまう。このように行動が減ることを消去(E:extinction)と呼ぶ。
(P+)(P−)ともにすぐに効果が表れるので多用されがちだが、罰とペナルティは行動を増やすことはない。罰やペナルティが長く続けば作業効率に影響がでるだけでなく、従業員の満足感にも影響がでるので単独で使うべきではない。
4つ褒めたら1つ叱る、「4:1の原則」

人間の行動原理特性「ABCモデル」(因果関係モデル)
Antecedent(先行条件:行動のきっかけとなる目的、行動の直前の環境)
Behevior(行動:行為、発言、振る舞い)
Consequence(結果:行動によってもたらされるもの、行動した直後におきた環境の変化)
そして先行条件は結果に左右されるのでA→B→C→A→...といったサイクルが生まれる。

望ましい結果が得られることを学習したとき、人は同じ行動を繰り返そうとする。
逆に絶望感や無気力感も学習される。

「会社への不満」→「対応」→「会社への不満」という負のサイクルが発生した場合には
不満を言ってきたときには婉曲的に回避し、仕事をしている時にこちらから話をきくこと。
これだけで、「仕事をする」→「対応」→「仕事をする」→...というサイクルになり業務効率が高くなる。
常に文句を言っている人に対して、その都度取り合うのは生産的ではない。
無視するのではなく、その行動が問題であることを告げる。
そしてポジティブな発言が出た場合には必ずリインフォースする。

PST分析法
①タイプ:Positive⇔Negative
②タイミング:Sokuji⇔Ato
③可能性:Tashika⇔Fukakujitu

効果順でいうと
PST,NST
PSF
PAT,NAT,NSF
PAF,NAF
の順で効果が高い。というわけで”タイミング”はとても大切。
行動分析には「60秒間ルール」というのがあって、望ましい行動があった場合、それに報いるのは原則として60秒以内でなければならない。
とはいえ、実際には60秒以内というのは現実的ではない。
人間は言語をもっているので「望ましい行動をとった人はいついつまでに評価される」というルールを共通認識することで60秒間ルールと同等の効果が得られる。

結果を出すための5つのステップ
1.ピンポイント
  結果の増加に直接むすびつく”ピンポイントの行動”を探し出す。
2.メジャーメント
  数の数えられる場合は「測定」だが、、数を数えることのできない場合には「判断」する。
3.フィードバック
  効果がでたかどうかをフィードバックする。
4.リインフォースR+
  本人が望むものを与えること。
5.評価
  連続リインフォースよりも分化リインフォースで。(最初は褒め続けるが、ある程度できるようになったら、たまに褒める)

メジャーメントに必要な4要素(基本的には4要素全てが必要)
①質の測定
②量の測定
③時間の測定
④コストの測定


この行動科学マネジメントを企業で導入しようとすると、「人間を動物のように手なずけ、あやつろうとしているのか」「経営者にロボットのように操作されるのか」といった感想が最初にはでるそうです。
なんとなく「数値を用いたパブロフの犬実験」のような印象を受けるからなのでしょうが、ピンポイントの行動とそのリインフォース因子を見つけることがリーダー(恐らく正しくはマネージャー)の重要な責務であるということには共感を覚えました。



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